SSブログ

慈悲深き霊鳥と王子の物語 [いろんなブンガク]

simurgh1.jpg


ペルシアのサーマーン朝の詩人フェルドウスィーは、10世紀の終わりから30年の月日を費やして大叙事詩を完成しました。それが『王の書』、シャー・ナーメ。


いくつか、今でも語り継がれる物語がありますが、今回はその中のひとつを。


シームルグとザールの物語です。


ワシに似た体躯、犬の頭、ライオンのツメ、クジャクの美しさを持つといわれる霊鳥・シームルグ。巨大な鳥で、クジラをわしづかみにできるといわれています。


たいへん賢く慈悲深く、盆地を取り囲む山に棲むといわれています。
ある時、王様に待望の王子が生まれました。

しかし、王子の髪は生まれながらに真っ白でした。
瞳もまつ毛も黒いのに、頭の髪だけは真っ白です。

なにか不吉なことの前触れではないか・・・そう考えた王は、王子をエルブース山脈に連れて行って、なんと置き去りにしてきてしまったのです。

置きざりに去れた幼い王子を見つけたシームルグは、王子を自分の巣に運び、自らのひな鳥たちとともに彼を育てました。

シームルグは彼に「ダンスターン・エ・ザンド」(偉大なる策略)と名付けて、いつくしみ育てました。そして王子はたくましく育ったのです。

simurgh5.jpg


一方、息子を捨てた王に子供は生まれず、ずっと自分が捨てた白髪の王子のことが頭を離れませんでした。やがて月日がたち、白髪の青年が山にいるといううわさを聞くとうれしくなって会いに行きました。


simurgh3.jpg


父王と再会した王子は、人間の世界へ戻る決心をします。
そして父王は彼にザールという名を新たに与えました。

ザールが人間の社会へ戻るとき、育ての親の霊鳥シームルグは、自分の羽を抜いて彼に与えました。
「困ったときはこの羽を燃やしなさい。すぐにお前のもとへ駆けつけるから」と言って。


さて、ザールはカブールでルーダーベ姫に出会って、一目で恋に落ちてしまいました。でも彼女は敵対する王の娘だったので、周囲に大反対を受けました。

たび重なるザールの説得と占い師の「生まれてくる子供は何度もこの国を救う勇者となるだろう」という言葉に、父王もやっと折れて結婚を許してくれました。

ザールはルーダーベ姫と結婚し、やがて姫は懐妊、出産の時を迎えました。
しかし彼女はおなかの子供が育ちすぎてひどい難産に苦しみ、命を落としそうにまなりました。


ザールはシームルグの言葉を思い出し、その霊鳥の羽を燃やしました。
するとシームルグが現れて、なんと今で言う帝王切開の方法を医者に指導したのです。そして薬草の作り方を教え、切開の傷口に塗るように言うと、傷はたちまちのうちに良くなり、姫は元気になりました。

生まれた子供はロスタムと名付けられ、予言の通りにペルシアで一番の戦士になり、何度も国を救いました。


simurgh2.jfif


シームルグは1700年は生きるといいます。
寿命が近づくと自らの身を炎に投じると言われているようです。

この鳥のモデルはゾロアスター教のサナーエという鳥らしいです。「生命の樹」にすんでいて、種をまき散らし大地に植物を育ませたといわれます。


何とも幻想的な話ですね。





a.HesiodListening to the Inspiration of the Muse.Edmond Aman-Jean.small.jpg

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。