花の色 [WAKA]
鏡曇りては わが身こそやつれける わが身やつれては おのこ退け引く
訳: 鏡が曇っているのを見ると、私の容色の衰えを
しみじみと思い知らされるわ
私の容色が衰えてしまったら
恋しいあの人も私を忘れて去ってしまうわね・・・
女性にとって一番の杞憂は、こんなことだと思いますw
でももしも、「きみは年を取ったね。容姿も衰えたね。もう一緒に街を歩いたり、友達に
紹介したりできないよ。さよなら」なんて言うような相手は、どうでもいい相手でしょうw
女性を若さでしか見ない男性は、サイアクです。
でも好きな人の前ではいつまでもきれいでいたいものでしょう?
だからふと鏡の中の自分にちょっと違う変化を感じた時に、いろいろと心配してしまうのです。
年をとってもきみは美しいよ、そんなことを言ってくれる人は最高だと思いますw
さやけき秋の夜 [WAKA]
きみが愛せし綾い笠 落ちにけり落ちにけり 賀茂川に
川中に それを求むと尋ぬとせしほどに
明けにけり明けにけり さらさらさやけの秋の夜は
訳: あなたさまがお気に入りだった綾い笠が
あれ、賀茂川に落ちてしまいましたわ
それを探そうと、人に訊こうとしていると
あれ、爽やかで清らかな秋の夜が
いつのまにやら明けてしまいましたわ
『梁塵秘抄』より。
梁塵秘抄ならば「遊びをせんとや生まれけむ・・・」の歌が一番有名でしょうか?
でも私のベストはこの歌です。
高校生のころに初めて読んで以来、ずっとずっと記憶に残っています。
さらさらと流れる賀茂の清流に赤いモミジがくるくると回りながら流れていくイメージでした。
綾い笠とは、イグサで編んだ笠のことで、武士が好んで被ったそうです。
「綾」はただの美称の接頭語。
だからこの歌を詠んだのはたぶん、遊女。
そして彼女のいとしい人は武士。
この歌のシチュエーションはちょっとよくわからないです。
でもなんか、深刻な感じはしないです。
「あ」の音の多用がなんかドキドキしますw
「さらさらさやけ」も流麗でうまいです。
日本語の響きの美しさがとてもよく表れている歌だと思います。
wish you were here, dar・・・ [WAKA]
いつとても恋しからずはあらねども 秋の夕べはあやしかりけり
訳: いつだって四六時中恋しいのには変わりはないのだけれど、
秋の夜は特に、あなたのことがとてもとても恋しいの
暑いと人はあまり物事を深く考えようとはしなのですが、涼しくなって日が落ちるのが早くなると、
ちょっとふと寂しさを感じたりするものですw
会えない人を思う。
となりにいてくれたらなぁと思う。
そんな歌です。
longing for seeing you [WAKA]
恋しきに命をかふるものならば 死にはやすくぞあるべかりける
訳: 人間は習慣でどうにでもなるものだから、さあ、試してみましょう、
恋しいあの人にこのまま会わなかったら、ほんとに恋い死にするのかどうかを。
『古今和歌集』より。
会えない恋しさから衰弱して死ぬことを「恋い死に」と言うそうです。
今の世の中ならばストーカーはいても、恋い死にする人はいないかもですがw
会えない日が募ってよほど逢いたさが増してもう気が狂いそう、そんな状態でしょうか。
恋い死にとはまた風流な。
いいえ、風流以外の何ものでもありませんw
恋せよ乙女 [WAKA]
思へかし いかに思われむ 思はぬをだにも 思ふ世に
訳: あなたからいとしいと思ってごらんなさいな
その相手からも、きっとどれほどでも愛されるでしょうから。
自分のことを思ってもくれないひとさえも
いとしく思うこの世の中。
思ってくれる相手ならば、さぞかし思い返してくれるでしょうよ
『閑吟集』より。
私はこんなふうに、一つの言葉を変化させて繰り返し畳み掛けるように使う言葉遊びが大好きです。
「思はぬ」とは、片思いのこと。
きっと、片思いに悩む女性に、恋愛経験豊富な女性が「あなたから告っちゃいなさいよ!!」と
励ましているような、そんな感じです。
でもこればかりは、自分が好きならば相手も好きになってくれるという確率は100%ではないので、
ちょっと信憑性が薄いですねww
蒼い焔(ほむら) [WAKA]
われを頼めて来ぬ男 角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ
霜雪霰降る 水田(みずた)の鳥となれ さて足冷たかれ
池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩(あり)け
訳: あたしにちょっかい出して それから逢いに来ないあいつ
角が三つはえた醜い鬼になっちゃえばいいわ
それで女たちに相手にされなくなっちゃえばいい
霜雪霰の降る、寒い 水田の鳥になっちゃえばいい
あしが凍えるほど冷えちゃえばいい
池の浮草にでもなっちゃえばいい、あんなやつ
ふらふらふらとふらついていればいいわ
『梁塵秘抄』より。
好きな相手が冷めてしまったとき、恋心がだんだんとめらめら、憎しみに変わってきます。
でもこんな恨み言を呟くくらいならばかわいいものです。
逆に言えば、こんな憎まれ口を聞くくらい、相手のことが好きなのですね。
涙の淵に・・・ [WAKA]
恋は重し軽しとなる身かな 重し軽しとなる身かな 涙の淵に浮きぬ沈みぬ
訳: 恋のせいで、あたしの体は重くなったり軽くなったりするの。
恋の重荷のせいでね。
だから、涙の淵に、浮いたり沈んだりしているのよ。
『閑吟集』より。
恋心を重さ軽さでたとえて、とても流麗な一句ですね。
涙の淵に浮き沈みする女心、女性の皆さんならばお分かりになるでしょう?
些細なことによろこんだり落ち込んだり・・・・
ね? そうでしょう?
しぐれふる [WAKA]
わが袖に まだき時雨のふりぬるは きみが心にあきや来ぬらむ
訳: あたしの袖が恋しさ涙にぬれ続けているのは
もう古い仲のあたしに飽きてしまったあなたの
心変わりをわかっているからなのかしらね
『古今集』より。詠み人知らず。
日本には雨に関する言葉がたくさんあります。
時雨は秋から冬にかけて降る雨のことですね。
そして、「ふりぬる」には雨が降ることと、月日が経って(経る→ふる、とよみます),
古くなる(旧る→これも”ふる”)という意味があります。
馴れた仲の恋人の心変わりを勘付いた女性の悲しみの歌のようですね。
もちろん、ここでの時雨はこの女性の涙です。そして秋には「飽き」の意味も。
秋の雨。
悲しみの涙。
日本人はこのような表現技法に長けているから、感情を口にして直接的に表現することが
他の国の人たちに比べて、下手なのかもしれないですね。
・・・am so crazy 'bout U [WAKA]
わりもなく 寝てもさめても恋しきか 心をいづちやらば忘れん
訳: どうしようもないほどに、何をしていても一日中、
あなたのことが恋しくて恋しくてしかたがないの
この気持ちをどこにやってしまえば、あなたのことを
忘れることができるのかな?
『古今和歌集』より。詠み人知らずです。
好きなのに会えない日々が続いている辛さなのか、あるいはもうすでに
この恋は相手の心変わりで終わってしまっているのでしょうか。
それとも単に、相手が会う余裕がなくて、この人は放っておかれているのでしょうか。
いろいろな想像が膨らみます。
ようやく、秋ですね。
物思いが似合う季節です。
Love anybody so far!! [WAKA]
添うてもこそ迷へ 添うてもこそ迷へ 誰もなう 誰になりとも添うてみよ
訳: 両思いになったからといって、どうせいろいろと気に病むことはあるのだから
誰とも恋しないでそうやって悩んでいるよりは
とりあえず誰でもいいから、つきあってみなさいよ
恋愛経験豊かな女性の、恋に悩むほかの女性へのアドバイスでしょうか。
好きな人がいなくてもそれはそれで悩むし、
いたとしても思いが通じないとか、通じたとしてもどれくらい相手に思われているかとか・・・
なんにせよ、悩みは尽きないものですw