『春香伝(춘향전)』 [いろんなブンガク]
韓国古典文学『春香伝』をお話ししましょう。
その前に基礎知識をちょっと。
キーセン…妓生。知性と美を兼ねそろえた技芸のことです。
ヤンバン…両班。朝鮮時代の貴族の呼び名です。
プサ…府使。地方長官です。
パンジャ…房子。地方官の役人の役職名です。
オサ…御使。王の命令で隠密に地方の不正を暴く役人。
【登場人物】
ソン・チュニャン(春香)…主人公の女の子。
イ・モンニョン(夢龍)…両班の息子。
ウォルメ(月梅)…チュニャンの母。
(。-ω-。)――――――――――キリトリ線――――――――――(。-ω-。)
さぁ、準備はよいですね?
昔、全羅道(チョルラド)の南原(ナモン)に、ウォルメという美しいキーセンがおりました。彼女はキーセンを引退して、ソンというヤンバンの妾になりました。これ以上はないという幸せの中、ただひとつ足りないのは、子ができないことでした。
彼女は神仏に祈りをささげ、ある晩吉夢を見たのです。
桃の花となしの花の枝を手にした天女が現れて、それから十月後、かわいらしい女の子を産みました。
春に生まれたこの子はチュニャンと名付けられました。
春の香り、という意味です。
朝鮮時代、父親が貴族であっても、母がキーセンであれば、生まれた子もキーセンです。
でもウォルメは、チュニャンをヤンバンの令嬢にも劣らぬように育てました。
チュンニャンも利発な子で、何をやらせても何を教えても、すべてをうまくこなしました。
チュニャンが16の時、新しいプサが都から赴任してきました。
プサには16になるモンニョンという息子がいて、彼は鞦韆(ブランコ)に乗るチュニャンに一目ぼれしました。お供のパンジャに呼びに行かせますが、「呼ばれたら行くとでも思いますか」とチュニャンは怒ります。花のような美少女の外
見に興味を持ったモンニョンは、チュニャンの利発さにも心惹かれます。
敬意を払い、改めて会うと、ますます惚れ込んでしまいました。
チュニャンもモンニョンに一目ぼれです。
でも…
キーセンの娘はキーセンになる運命なので、ヤンバンの正妻にはなれないのです。
それでも100年の縁を誓うふたり。
結婚の約束をして一年後、モンニョンの父が都に呼び戻されて出世することになりました。
モンニョンも都に帰ることになり、二人は再会を誓い離れ離れになります。
これは上村松篁『水ぬるむ』
三年がたちました。
また新しいプサが赴任してきますが、今度のプサは悪人でした。ナモンじゅうのキーセンを集め、美女と名高いチュニャンを無理やり妾にしようとします。
拒んだチュニャンは拷問を受け、牢に放り込まれました。
ナモン中の人々は、新しいプサのこの私的で不合理な仕打ちに眉をひそめました。
将来を誓い合った夫となるべき人がいるので、二夫にまみえるくらいなら死にますと、チュニャンは貞操を守るために死を覚悟します。
罪人はこのように首枷をはめられました。
そのころ、都でチュニャンを恋しがってめそめそしていたモンニョンは、はっと気が付きます。いつまでもめそめそしてはいられない。早く出世して、世に認められる男になり、チュニャンを迎えに行こう、と。
彼は一念発起、毎日勉強に明け暮れます。
そしてついに、科挙に主席合格を果たし、王直々に、全羅道のオサに命じられたのです。
アメンオサ。正義の使者~^^
オサは、身分を隠して地方をまわり不正を暴いたり、孝厚い人物を見つけたりして、王に報告する特殊任務を担った役人です。
マペ。オサの必須アイテム、水戸黄門の印籠のようなものです。
モンニョンは貧しい格好をして身分を隠し、チュンニャンのいるナモンに向かいます。
その頃チュニャンは牢の中で死を覚悟していました。
きっとモンニョンは、都で自分のことなどすっかり忘れてしまったのだ、それでも私は新しいプサの妾になどなるものですか、と思いながら。
プサの誕生日が華やかに祝われる日。
いうことを聞こうとしないチュニャンを、プサはその日の最後に処刑しようとします。
嘆き悲しむ母のウォルメ。
そこに没落した貧乏人に身をやつしたモンニョンがやってきます。
身なりの貧しいモンヨンを見て、ますます悲しむウォルメ。
そんなウォルメに、牢の中から「私が死んだら、私の着物をすべて売って、モンニョンに着物を買ってあげてください」とお願するけなげなチュンニャン。
すぐにでもチュニャンを助け出したいけれど、モンニョンは王の密命を受けているので、まだ身分を明かせません。
翌日。プサの誕生日の宴会が催されました。
みすぼらしい身なりで現れて、食べ物を恵んでくれというモンニョン。
親切にしてくれたのはたった一人の役人だけ。
食べ物のお礼に詩を作り、宴席を去るモンニョン。
親切にした役人だけが、モンニョンの作った詩の意味を理解して、宴会の場を逃げ去りました。
そしてすぐに太鼓が鳴り響き、オサの部下たちが宴席に押し寄せました。
役人たちは慌てふためきます。
オサは高座に座り、プサを捕えさせ、代わりに無実の罪で牢に入れられた人々を解放させました。
もちろん、チュニャンも。
大きな首枷をはめられたチュニャンは、オサの御前に連れてこられます。
まだそれが愛するモンニョンとは気づいていません。
「そのほう、キーセンの身分で役人の命令に背き、死をもってして当然の騒動を引き起こしたが、私の側仕えをするならば、命ばかりは助けてやろう」
チュニャンはあきれ返ります。
「都から下ってくる役人は皆同じですね。もうよろしいですから、わたくしを殺してください」
するとオサは自分の指輪を外し、チュニャンに渡すよう部下に命じます。
それは3年前に、チュニャンがモンニョンに別れ際に渡した約束の印なのです。
顔を上げよとオサに言われ、高座のオサを見たチュニャンはびっくりです。
そして目には涙があふれました。
この話を聞いた王様は、チュニャンに貞烈夫人とう称号を与えました。
彼女はモンニョンとともに都へ上がり、右大臣にまで出世したモンニョンとともに、子供たちを育てて老いて死ぬまで睦まじく暮らしましたとさ。
この古典をもじって、いくつかのドラマや映画が作られているようです。
『快傑春香』は、現代を舞台にしたラブコメでその中の一つ。登場人物も名前が同じです。
面白いので、興味があれば見てみてください♪
こんばんは。
少々お酒も入っていますが
nikiさんの文章を拝読して
不覚にも泣いてしまいました。。。
by rtfk (2011-07-02 00:35)
いいお話ですね。
by ねじまき鳥 (2011-07-02 01:43)
とてもいいお話ですね。
韓国の古典に興味がわきました。
by 華桜子 (2011-07-02 02:00)
良いお話をありがとうございます!
by Mark (2011-07-02 09:58)
ほぉ~、いいですねぇ(^0^)
by うっしー (2011-07-02 11:17)
拙いblog にご訪問頂き、nice!まで頂き
ありがとうございます!
初めてお伺いし
取り込まれている画像等のしっかりしていることや
その内容に、とても趣味のいいといえばいいのか
感性の素敵な方なのだなぁ~と ・ ・ ・
みたヨ♪(・ω・)ノ!(67) ご自由に(5)
訪問先で初めて出会い
こちらも,とっても新鮮で感激しました。
これからも、ROM中心のいい加減なblogerですが
よろしくお願いします。
by miopapa (2011-07-02 11:46)
ご訪問&nice!ありがとうございます。
“ファン・ジニ” という韓国ドラマを観たことありますが、それも妓生のお話しでした。
『快傑春香』は知りませんでしたが、面白そうですね。
by はなぶく宇宙人 (2011-07-02 15:23)
やっぱ、、、少女時代がイイv(^皿^♪)
by emuzu (2011-07-02 16:53)
こんにちは!2~3年前から韓流ドラマに嵌って居ます、最初は「チャングムの誓い」がきっかけでした。
by シラネアオイ (2011-07-02 18:31)
勧善懲悪、それが見事な筋立てになって、さすが名作だけのことはありますね。
朝鮮の人々の夢と憧れが、息づいているようです。
by ナツパパ (2011-07-02 21:34)
春香伝は、ハッピーエンドだよって
聞いたことはあったんですが
なーるほど。
やっぱりDVD借りてみましょう(^ ^)
by nonnon2 (2011-07-02 23:10)