コルティザン [Movies 2 C]
コルティザンとは、「法廷」と言う言葉から派生した言葉です。
中世は、法廷は政府の中央機関であり、君主の住居でもありました。
その「法廷=コート)」に出入りする人、転じて貴族たちの中で華やかさを添える娼婦たちのことをそう呼ぶようになりました。
昔の女性は社会的な制約がいろいろと厳しかったのです。
もちろん、貴族の娘は勝手に外出などもできません。
だからこそ花を添えるのは、それ以外の階級の若い女性たちでした。
でも一口に「娼婦」といっても、イメージはずいぶん違っています。
当時の娼婦はランクによって呼び名が違っていて、貴族や諸侯、一国の王までも相手にするコルティザンが
いました。一般的には、二種類に分けられたようでした。
Cortegiana Onesta とは知性と教養と美を兼ね備え、
Cortejiana di Lumeとは今現在その言葉からイメージされるような下層階級の娼婦たちです。
現代の私たちからするとちょっと理解しがたいのですが、前者は自由を夢見る女性たちの憧れの職業でした。
たぶん、日本の花魁や李氏朝鮮時代の妓生(キーセン)がイメージ的に近いと思われます。
美しい容姿、深い教養、歌や踊りの才能、高い知性、すべてを兼ねそろえたものだけが、
大貴族や君主の「お気に入り」となり、莫大な富を築きあげることもできました。
実在したルネサンス期のインペリアというコルティザンは、「ローマの花」と呼ばれ、男たちの
憧れの的でした。これには母親の「英才教育」があったと言います。
実は彼女の母親もコルティザンでした。法王庁の高官の愛人となり、インペリアを産むと、
莫大な持参金を得て、別の官僚の妻となったのです。たぶん相手はもっと高位の高官だった
のでしょうね・・・。
母は娘をコルティザンにすべく、歌、踊り、知性、教養など、ありとあらゆることを学ばせました。
そして見事、ローマ一のコルティザンに育て上げました。
ローマの大銀行家にパトロンになってもらい、彼女は召使をあまた抱える大豪邸を構え、
貴族さながらの豪奢な毎日を送っていたと言われます。また、あの芸術家のラファエロを一時期
恋人にしていたこともありました。
貴族、法王庁高官、外国大使、芸術家、あらゆる男性たちが彼女に魅了されました。
それなのに、彼女はたった31年の生涯を服毒自殺で閉じてしまいました。
あまりにも突然のことだったので、誰にも理由はわからなかったそうです。
莫大な財産は、修道院に預けた娘にそのほとんどを、一部を母親にと遺言したそうです。
娼婦は世界最古の職業だと言われています。
ローマの皇帝の妃でさえも、夜になると娼館に出かけて娼婦に身をやつしたという女性もいます。
彼女の場合は趣味でしょうけど(笑)、貧しさのために身を売る女性が多かったようです。
これはフランス版のジャケットです
A Disteny of her ownは、ヴェネチアのコルティザンの話です。
原題を訳せば『彼女自身の運命』。
邦題は『娼婦ヴェロニカ』。インパクトを狙ったんでしょうけど(このタイトル、安っぽくてキライです)。
イタリアがまだ小さな共和国に分かれていたころ、16世紀のヴェネチア共和国。
封建社会で、女は男の所有物であり、自分の幸せなど願えるわけもない時代でした。
ヴェロニカはマルコを愛したけれど、彼は貴族、身分違いで決して一緒になれない運命でした。
庶民の娘が貴族と渡り合うには、コルティザンになるくらいしか道はなかったのです。
このヴェロニカは、やはり実在の人物でした。
ヴェロニカ・フランコ。
ヴェロニカは国防大臣に目をかけられて、美しいコルティザンになります。
彼女がコルティザンになったと聞いたマルコが会いに来ても、彼女は彼を拒絶します。
このあたりが、女心なのです。
やがてヴェネチアはトルコとの戦争が始まり、国家存亡の危機に。
フランス王の援軍を得るために、彼女がフランス王に送り込まれることに。
国の運命を背負った彼女は、フランス王のもとへ。
そして見事に援軍を得ることに成功します。
しかし女たちから妬まれて、おりしも蔓延した黒死病(ペスト)をひろめた魔女として、魔女裁判にかけられることになるのです。
運命に流されるのではなく、運命に挑むことを自ら選んだ女性の物語です。
こんばんは☆
by arles (2011-07-23 04:19)
いつの時代にもコルティザンという世界はありましたが、
女性が社会に進出し、素晴らしい地位を築き上げている現在、
男性版コルティザンが出てきそうな気がします。
by hirochiki (2011-07-23 06:24)
こんにちは、コメント有難うございます。
いつも高尚な話題に尊敬しています。
凄いですね。v(o^Ⓓ^o)ニコ
FaceBookでの反響も大きかったですよ。
by たもちゃん (2011-07-23 12:48)
哀しいことです。
by rtfk (2011-07-23 13:13)
娼婦と聞くとイメージするのは言葉のまんまの感じでしたが、教養を積むと女性の憧れの職業になっていたなんて知りませんでした。
そしてむしろ自由なんて・・・そんな時代もあったのですね。
by みやす (2011-07-23 15:31)
やっぱり...魔女裁判は嫉妬からたんだ!
理屈抜きに裁判ですからねえ、目立ったらお終いだったんでしょうか。
厳しいなあ。
コルティザンって美しいだけじゃダメなんですねえ、それもたいへんですね。
by ナツパパ (2011-07-23 20:30)
disteny⇒destiny
by アヨアン・イゴカー (2011-07-24 09:58)
拒絶の女心か・・・。
by Hirosuke (2012-09-19 02:33)
仕事柄、コルティザンさんには会いますが、花魁さん(高級娼婦さん?)には、会ったことがありません(^^;) 今で言う”銀座のママ?”ですかね(^^;) 歴史の影には女性アリ(^^;)やっぱり女性はスゴイです(^^)v
by さうざんバー (2012-09-19 19:46)