恋焦がれ通ふ心 [WAKA]
羨ましや わが心 夜ひる きみに 離れぬ
文は遣りたし せんかたな 通ふこころの 物を言へかし
訳: なんて羨ましいのでしょう、いとしい人につねに寄り添っている私の心ったら。
私のこの身はどんなに思ってもそばにいることができないのに。
この身とはうらはらに、昼も夜も、彼のそばにいることができるのですもの・・・
手紙に気持ちをつづって送りたいのだけれど、事情がわからないからどうしようもなくて
送ることができないでいる
通う心がせめてこの恋しい気持ちを、彼に伝えてくれればいいのにな・・・
『閑吟集』より。
読んでみると一瞬、「うん??? どういうこと?!」と思うでしょう?
彼女が羨ましがっているのは、自分自身の恋心なのです。
何らかの事情があって、恋しい人と離れていなければならなくて、だから自身は離れているけれど、
恋しいと思う気持ちは彼につねに寄り添っています。
その自分の恋心が羨ましいとは、よほど思いつめているのですよ。
誰かほかの、彼のそばにいるだろうかわからない女性を羨むのではなく、つねに彼に寄り添う
自分の心が羨ましい・・・・自分の恋心に嫉妬するなんて。究極の恋慕です。
この身が添えないならば、心が飛んで行って、気持ちを伝えてほしいのですって。
「せんかたなし」は方法がないということで、文盲で手紙自体書けないのか、あるいは相手のいる正確な
場所を知らないのか。あるいは、相手が今現在どこでどうしているのかがわからないのかも。
または、苦しい恋情を、紙に書くことは不可能なのか・・・・
心を伝えたいのではなくて、心に、恋しい気持ちを伝えてほしいなんて。
よほど相手が恋しくて仕方がないのでしょうね。
画像は上村松園です。
深いですねー^^そんな恋をしてみたいですね。
by kyon (2012-04-26 00:26)
満たされている恋であれば思うことで幸せになり、
満たされていなければ思うことで恋苦しくなり・・・
恋するって深いですね。
by nana_hyr (2012-04-26 12:48)
「愛される」ことよりも「愛する」ことの方が、より深い心の満足を得られる。
これは、拙い経験の中から確信したことですが、閑吟集は私たちの心にストレートに響く歌がたくさん納められていますね。
by 伊閣蝶 (2012-04-27 10:06)