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愛のためにしたことだったけれど・・・ [l'histoires de femmes]

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大航海時代ほど、当時のヨーロッパの冒険家たちにとってロマンに満ちた時代はなかったことでしょう。

香辛料を求めてアジアへの直接航路を発見するためにやっきになって、列強諸国は火花を散らしました。
そして偶然の幸運というか・・・・相手側にとっては降ってわいた不幸ですが、新大陸発見という快挙に
つながったのです。

コロンブス・・・1492年、あれが新大陸だった認めていれば、「アメリカ」じゃなくて「コロンビア」になっていた
かもしれないですが・・・まあ、別にコロンビアはあるし、あの大国にもコロンバスとかあるので、結果的には
良しとしましょうか。

南アメリカ大陸も、ヨーロッパ人には魅力的な土地になりました。
古代文明が栄えたことによって、未知の財宝にあふれた場所だったのです。

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そんな16世紀の初頭、今のメキシコに、ある女の子が生まれました。
ある族長の娘として、利発で美しい娘に育ちました。

彼女の名前はマリンチェ。
良い教育を受け、何もかもに恵まれた少女時代でした。

でも彼女の父親は、早逝してしまいました。
たぶん彼女が10代前半のころまでのことです。

母親は別の男性と再婚し、彼女の異父弟を産みます。
後継ぎが授かったために、彼女は邪魔者扱いされたのか、あるいは自ら身を引いたのかわかりませんが、
何らかのいきさつがあって、奴隷として売られました。

タバスコという町の首長に売られた彼女は、生まれ故郷の言葉を含めていくつかの言語を話せるように
なりました。これが彼女の利点であり、のちに運命を置きく変えることにもなるとは、まだ少女は気付いて
いなかったことでしょう。

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彼女は、この町である運命の出会いを果たすことになります。

スペインのカスティリヤ生まれの野心家の男、エルナン・コルテス。
彼は19歳で海を渡り、ベラスケスの下で、キューバなどで働いていました。

わずか武器を持ちわずかな兵を連れて、メキシコ制服にやってきました。
タバスコの首長は従順に彼を受け入れました。そして奴隷を献上したのです。

マリンチェもその中に含まれていました。
アステカ制服をもくろむコルテスは、マリンチェの語学力に目をかけました。
そして彼女の美しさにも。

マリンチェもまた、初めてコルテスを見た時から彼に心酔してしまいました。
それにはこの地の伝説が関係していました。

a.lamalinche4.jpgコルテスの傍らには、つねにマリンチェが。

ケツァルコアトルという白い顔の神が、いつかこの地へ戻ると宣言して去ったという伝説。
マリンチェは彼を見た時に、彼がそのケツァルコアトルだと確信したのです。

彼女は彼のために尽くしました。
彼が多くのインディオの人々を殺しても、だましても、一途に彼の力になり続けました。
彼の子供まで産んだし、ないがしろにされて部下と結婚させられても、それでも彼に従いました。

やがて一行はアステカ王国を征服しました。
アステカの王もまた、コルテスをケツァルコアトルだと信じたのです。

聡明で愚かな一人の若い女性の尽力で、この地はスペインに征服されてしまいました。
もちろん、彼女一人のせいではないのだけれど・・・・・・

彼女は若くして亡くなってしまいました。
そして長い間、何世紀にもわたって、「裏切り者」と呼ばれました。

愛のためにしたことなのに、結果的には国を滅ぼす手助けをしたことになってしまったのです。
彼女の子供はマルティンと名付けられて、スペインに渡りまたメキシコに戻ってきました。
詳しい消息は不明ですが、彼女の血筋は今でも受け継がれていると言われています。

a.lamalinche5.jpg映画もあるようです。

・・・・コルテスはスペインに戻ります。
家族を作り、子孫を残し、62歳でセビリヤでなくなります。
でも彼は、遺言を残していたのです。

もし自分が死んだら、亡きがらをメキシコで葬ってほしい・・・・と。
新大陸でしかぱっとしなかった彼にとって、そこは自分が一番輝いていた時代を過ごせた場所でした。
彼女の死から20年近くたって・・・・はたして、褐色の肌の小柄な美女だった、かつての愛妾のことを
思い出したのかどうかは、わかりませんが・・・・・。

近年、「裏切り者」の汚名は晴れてきたようです。
高校生のころに伝記を読んだきりなので、記憶が定かではありませんが、ずっと心に残る人物ではありました。
征服者を愛してしまったことが、彼女の運命を狂わせてしまったのでしょうね。





メキシコのマリンチェ (1980年)

メキシコのマリンチェ (1980年)

  • 作者: 飯島 正
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1980/08
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nana_hyr

慕っていることがわかっていて部下と結婚させられたら
もう慕うことなんてできないよ~(+_+)
心底心酔するのも怖ろしいことですな~^^;
by nana_hyr (2012-03-21 13:23) 

伊閣蝶

結局、コルテスは、ケツァルコアトルではなくテスカトリポカだった、ということなのでしょうか。
侵略者は、侵略した地の住民を利用して「効率的に」支配を進めることを考えるものですが、マリンチェもその轍を踏まされたのだとしすれば、本当にやりきれない話です。
by 伊閣蝶 (2012-03-21 15:29) 

aya

愛は盲目・・・しかしマリンチェのように一途に愛するのは出来ないですね。
私ならきっと もう諦めています(´∀`;)
by aya (2012-03-21 22:11) 

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