桜町中納言 [平家物語]
さくらの花は咲いて七日で散ってしまう、そのことを残念に思った中納言藤原成範(しげのり)は、
中国の泰山の守り神・泰山府君にそのことを嘆きます。
彼の風流な願い事に感じ入った泰山府君は、花の命を伸ばしてやった・・・・という話は、世阿弥の能、
『泰山府君』です。
泰山府君とは、平安末頃の山桜と里桜の交配種の桜です。
この時代の一般的な貴族たちの庭に植えられたり接木されたりした種類なのでしょう。
桜をことのほか愛し、自分の邸の庭を桜で埋め尽くし、毎年春の花の季節を静かに愛でたといわれる
中納言藤原成範。彼は「桜町中納言」とよばれました。
しかし彼は優雅でのんきな平安貴族なのではありません。大変、不遇の人なのです。
父は後白河法皇の寵臣でしたが、平治の乱で敗死してしまいます。
成範は清盛の娘と婚約していたけれど、これによって婚約破棄、位を落とされて左遷されました。
そして清盛の娘は左大臣に嫁いでしまうのです。
左遷の翌年には以前の位を取り戻して朝廷に戻ることができましたが、そのときはすでに、彼は
影の存在でした。
光を受ける人々(=清盛の一族)がいれば、影の人々もいます。
彼は不遇を嘆くよりは、現実逃避を選びました。
すべての不幸を忘れて、吉野山の桜の林を自邸の庭に再現することに、魂を注いだのです。
出世も、愛するひとも、なにもかもが彼の手をすり抜けていきました。
残るははかない、春の夢のみ。
この絵は中村岳陵『桜町中納言』です。
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今週は、勝手にさくら特集ですww
さくらのお話をいくつか書くつもりです。
愛でるものは口を利かぬ木だけとなった…
なんだかさみしいですね。
桜の木はいろんなお話があって面白いけれど、
どこか悲しいのはそれが春だからでしょうか。
by nana_hyr (2012-04-04 00:47)
風流というものは、苦難や苦闘の果てにあるものかもしれないですね。
by お水番 (2012-04-04 09:41)
桜の花は、日本人の心に響きますね。吉野山の桜は、昔一度だけ観ましたが、もう一度観たいですね。
by たいちさん (2012-04-04 10:14)
桜の時期に桜のお話シリーズなんですね。話ははかないですが絵はもとめた美しさのごとくでしょうか。…この記事とは関係ないのですが、先日紹介されていたアボガドのお料理、真似させていただきましたが、とてもおいしかったです。ありがとうございました。
by yuzuhane (2012-04-04 16:31)
花は裏切りませんからね、季節が来ればきちんと咲いてくれますからね、
吉野千本桜は本当に有名ですがこの時代にもう知られていたんですね。
これから時期的に桜祭りが行われますね、楽しみな季節です。
by 馬爺 (2012-04-04 19:09)
私も財力があれば 自分の庭に吉野の山を 造りたい!!
by aya (2012-04-04 20:43)
一番上の絵は・・・ うーん。 感動。 !!
しだれ桜も 同じく。感動!!
by 斎藤 ☆ (2012-04-04 22:01)
ようやく今年もお花見の季節になってきましたね。
こんなに優雅に楽しんでみたいものです☆
by non_0101 (2012-04-05 08:29)