SSブログ

鉄仮面の男 [l'histoires d’hommes]

a.iron1.jpg

彼の本名も出自も、なにもこの世には出回っていません。
人々の想像力をもっとも掻き立てる、フランス史上、一番有名な謎の人物といえるでしょう。

デュマを始め、多くの人々がこの男の謎に興味を持ち、本や映画にしてきました。
隠されるとよけいに知りたくなるという、人の好奇心を大いに刺激する要素を持つ存在だからでしょう。

a.iron3.jpg

1698年の夏、バスティーユ牢獄にある一人の囚人が収監されます。
奇妙なことに、この男は布の仮面で顔を隠し、監獄張が直々に丁寧に世話をしていました。

人前では決して仮面を外そうとはしません。
そして誰もこの男の正体を探ってはいけないという、ルイ14世からの王命も下っていたのです。

王直々に正体を探るなとの命令が下ったために、王の近親者、しかも表ざたにはできない人物なのでは
ないかとうわさされました。

a.iron2.jpg

ルイ13世の庶子で、ルイ14世の異母兄だったとか、ルイ14世の母后の不倫の子供であるとか。
この男は30数年間も、人生のほとんどをあちこちの牢獄の中で暮らしていました。

しかも、人前では決して仮面を外すことなく。
それなのに服は上等な絹を着て、食事も貴族のように豪華です。

太陽王と呼ばれた、ブルボン王朝最盛期の統治者であったルイ14世。
領土を拡大し、ヴェルサイユ宮殿を作り上げました。

この仮面の男はルイ14世の血縁者で、正当な身分ではなく、しかし王とよく似ていたために仮面を外すことなく幽閉されていたというのが一般的な予測なのです。

a.iron4.jpg

ルイ14世は、スペイン王女を母に、フランス王を父に生まれました。
両親は幼いころに政略結婚し、長年不仲でした。母妃は37歳で彼を産んだので、当時としてはかなりの
高齢出産でした。23年も子供ができなかったので、ルイ13世の子ではなく、宰相マザランの子ではないと
のうわさもあったようです。 → http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07-5

マザランは生涯この王に仕えたので、そんな噂もありました。スペイン王女(ルイ14世にはイトコに当たります)との縁談が持ち上がったとき、ルイ14世はマザランの姪を恋人にしていたため、縁談を断りました。
でもマザランは、無理やり二人の仲を裂いてルイ14世をスペイン王女と結婚させたそうです。

a.iron5.jpg

そんな危険なうわさがあったからなのか、あるいはマザランの仕業なのか、仮面の男は世間から隔絶されて、牢獄の中で優雅な暮らしをさせられていたのです。

デュマはこの男をルイ14世の双子の弟として、『鉄仮面の男』という物語を書きました。
最後に死んでしまった王の代わりにこの鉄仮面の男が王になり替わるという衝撃のどんでん返しです。

本当は布製のマスクをしていたらしいですが、いつしか鉄仮面ということになってしまったのは、やはり
この人物の正体が永遠の謎だからでしょうか。神秘のベールが、鉄仮面となったのですね。

a.iron6.jpg

1703年の11月に、仮面の男は獄中で亡くなったことにされています。
男の正体を知らされていたであろう監獄長もルイ14世も、そしてごく少数の大臣たちも、この男の正体をついに明かすことなく亡くなったので、結局正体は謎のままです。

いまならDNA鑑定で正体がわかるでしょうに・・・?



仮面の男 [DVD]

仮面の男 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • メディア: DVD


coucou♪(・ω・)ノ!(290)  ご自由に(16)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

coucou♪(・ω・)ノ 290

ご自由に16

くまら

そー言えばこの映画観に行った^^
by くまら (2012-03-28 00:16) 

あきら

この映画みてから、色々気になって読んでみたりしています。
今みたいに色々はっきりさせることができないから、かえって興味がかきたてられるのかもしれませんね。DNA鑑定なんかやったら一発だ・・・。
by あきら (2012-03-28 01:23) 

旅爺さん

「人前では決して仮面を外そうとはしません。」
日本人ならさしずめデーモン小暮さんですね。

by 旅爺さん (2012-03-28 07:09) 

nana_hyr

はじめは、ずっと仮面をしているなんてかわいそうと思ったけれど、
本人にとってはそれで楽な面もあったのでしょうね。
自分に似た容姿、3人はいるといいますが、
似ることでどこかで悲劇があるとしたら、たのしい数ではないなぁ。
by nana_hyr (2012-03-28 09:55) 

桔梗之介

わからないところが、想像力をかきたてられるのでしょうね。
by 桔梗之介 (2012-03-28 09:58) 

B.B.

はじめまして。
私もこの話が大好きで、映画を見に行きました。当時は高校生でした。マルコヴィッチが本当にかっこよくて…(笑)
鉄仮面自体は歴史の暗い遺産かもしれませんが、鉄仮面の向こう側に知られざる人の物語があるかと思うとドキドキしますね(^^)
by B.B. (2012-03-28 11:41) 

吉之輔

こんにちは、お尋ね頂きナイス有難う、先ずはお礼まで。
此れからも宜しく願います。此方は春まだ遠しです。
by 吉之輔 (2012-03-28 14:40) 

hatumi30331

この映画見ました。^^
結構前でしたね〜♪^^
by hatumi30331 (2012-03-28 15:05) 

美美

私もテレビで観ました。
ふむふむ随分前でしたね^^
by 美美 (2012-03-28 17:32) 

かぁしゃん

永遠に謎のまま・・・。
今の時代には、有り得ないでしょうね。
マスコミが放っておかないわ。
by かぁしゃん (2012-03-28 19:39) 

馬爺

仮面の王子気の毒に似ていたためにこのような仕置きをされるなんて
良かったです誰にも似てなくて。
by 馬爺 (2012-03-28 19:54) 

vega

映画を観ました。
三銃士も絡めたストーリーで、話としては面白いのですが…
ディカプリオの人気がすごかった頃だったためか、
感情移入が難しかった作品でした。

by vega (2012-03-28 22:08) 

arles

こんばんは☆
by arles (2012-03-28 22:14) 

ダイナ

もちろん私も観ました♪
ていうか、私もそのうち記事にしようかと思ってた映画。
この映画のディカプリオって最高だよね♪
ほれぼれほれぼれ(*^^*)
by ダイナ (2012-03-28 22:16) 

ninja

気にはなっていたのですが結局観ていなかった映画なので、早速観てみようと思います^^
by ninja (2012-03-29 06:44) 

sig

こんにちは。
私が小学生のころ、兄に勧められて読んだ最初の長編小説が、講談社の「鉄仮面」でした。10数年前古書市で見つけて所蔵していますが私の宝物の一つです。本当は兄が読みたかったのだろうと思います。
映画はもちろん観ました。最近またWOWOWで放送されたので、ハイビジョンで録画してあります。「鉄仮面」は私がこの時代に興味を持つようになったきっかけです。
by sig (2012-03-29 11:33) 

ご自由にを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました
a.HesiodListening to the Inspiration of the Muse.Edmond Aman-Jean.small.jpg

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。