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サヴォイホテル殺人事件 [l'histoires de femmes]

1890年にモンパルナスで生まれたマルグリットは、踊り子で高級娼婦。
その美しさは多くの金持を虜にしていました。

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30代になっても、少女のようなあどけなさを残す美女でした。
彼女は33歳の時に、ある男性とカイロで運命的な出会いをしました。

10歳年下のエジプトの大富豪、アリ・ファミーユ。
彼は親の莫大な遺産を受け継いで、ヨーロッパ中で放蕩の限りをつくしまくる遊び人でした。
マルグリットの美しさに目をとめた彼は、その後まもなくパリで彼女に再会した時にプロポーズしました。

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1923年、二人は正式に結婚しました。
当時は英国のカーナボン卿がツタンカーメンの墓を発見したことで盛り上がっていたルクソールへ、
ハネムーンに出かけました。

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まだ子供と言えるくらいの、金の使い方もわからないエジプト人の夫と、貧しい暮らしから身を売って
生計を立てていたシビアな10歳年上のフランス人の妻は、すぐに亀裂を生じます。

ここでごっそり慰謝料をもらって離婚できればよかったのですが・・・・離婚はできなかったようです。
毎日毎日ケンカばかり。夫は結婚しても放蕩も女遊びもやめません。
妻も放っておかれる寂しさと腹いせに遊び始めます。すると夫は激しく嫉妬します。

二人の結婚は、1年も持ちませんでした。
終焉は1923年7月8日に起こりました。

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二人は7月1日に、ロンドンのサヴォイホテルのスイートにチェックインしました。
1881年、リチャード・ドイリー・カートがザ・サヴォイという劇場を造りました。
この劇場の隣に、1889年に建てられたのが、サヴォイホテルです。
1920年代には、ホテルの大広間がダンスホールとしてロンドンのホットスポットとなっていました。

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7月8日。
嵐の気配が漂っていました。

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一緒にディナーをとる姿が、ホテルのレストランで目撃されていました。
真夜中には嵐がやってきて、雷鳴がとどろき、雨の激しい音が聴こえてきました。

そして嵐を裂く銃声・・・・・・!!

ポーターが駆けつけると、血まみれで床に倒れた若い夫と、そばにピストルを持ったまま立ち尽くす
美しくうつろな表情の妻・・・・・。

雨が叩きつける大窓の外で、ピカッと走る閃光、浮かび上がる青ざめた顔・・・・

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死人に口なしとは、まさにこのことでした。
マルグリットの証言によると、夜中、二人は口論を始めたそうです。
そして夫が暴力を振るってきたので、彼女はとっさにピストルを手に取って夫に向かって引き金を引いた、と。

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ふだんから夫は衝動的に彼女に暴力を振るい、彼女はDVをうけていたと、裁判では声を震わせて
涙ながらに訴えました。

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それどころか、彼の性的嗜好は「異常」であり、彼女はいつも苦痛を感じていたとまで。
ゴシップが娯楽となり始めていた時代でした。マスコミはこの事件を派手に掻きたてました。
彼女の弁護士は彼女の無罪を高らかに主張し、人々も涙にくれる美女に同情しました。

しまいには、東洋人は西洋人には想像もできないほどの異常な性的嗜好があるから、西洋人の
マルグリットが夫婦生活に苦痛を感じていたのはどうしようもないことだ、などと、人種差別的な
意見も出てきました。

彼女は無罪を勝ち取りました。
でも、莫大な遺産はすこしも受け取ることはできませんでした。

「言った」「言わない」は双方で言い合いをしても水掛け論なのに、一方が死んでしまったら、余計に
真実は闇の中です。しかも、人種差別的な主張は、反感を持ちますね。

夫婦間のことは他人にはわからないとはいえ、たとえ彼女の話が真実だったかもしれないとしても、
うーん、なんだか、ひどい事件ですね。



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伊閣蝶

西洋人の女と、西洋人以外の男との間の確執は、古来より避け得ぬもののようにあって、小説や戯曲の題材にまでされてきました。
「オテロ」しかり「インドへの道」しかり。
フランツ・ファノンもそれに苦しんできたようですし。
それにしても、「サヴォイホテル殺人事件」はひどすぎる事例ですが。
by 伊閣蝶 (2011-10-05 09:52) 

ナツパパ

うーむ、拳銃を持っている辺りもすごいなあ。
結局無罪ですか。
彼女にとってはこれもまた勲章になったのでしょうかねえ。
by ナツパパ (2011-10-05 14:51) 

たもちゃん

犯罪の陰に女性ありって言うけれど、それを垣間見るような
お話ですね。
興味深いです(*^o^*)/
by たもちゃん (2011-10-05 17:03) 

Hirosuke

金と美と欲は、人を狂わせますね。

悲しい生き物です。


by Hirosuke (2012-08-02 05:06) 

daimuran

ちょうど10日ほど前に英国人と此処で食事しましたが、新装リニューアルしたと云うことです。
by daimuran (2012-08-02 13:34) 

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