『高野聖』 泉鏡花 [いろんなブンガク]
若い修行僧の宗朝は、茶屋で出会った薬売りと二股の道で分かれます。
一緒に旅をしようと言われたのを、からかわれて嫌な思いをしたために断ったのです。
でも途中、人づてに、薬売りの行った道は行方不明者もでている危険な道であると聞かされました。
仏に仕える彼は、見捨てることができずに薬売りを追いかけました。
蛇やヒルの大群に襲われながら、宗朝は、やっとの思いで一軒の家を見つけます。
呆けた男が一人いますが、話が通じません。
すると中から、世にもたぐいまれな美女が出てきました。
厩でよいからと宿を懇願する宗朝に、初めは断った女も折れて、泊めることにします。
そこに明日売りに出す馬を引き取りに一人の男がやってきて、女はこの男に留守を頼み宗朝を
行水に案内します。
女に勧められるがままに淵に汗を流しに行くと、女は裸身で宗朝に寄り添ってきました。
慌てて淵を飛び出る宗朝。
淵への行きかえり、カエルや蝙蝠などが女に纏いついてきますが、女はそれらを邪険にあしらいます。
戻った宗朝を見て、少し驚く馬を連れに来た男。
その夜、女は宗朝をもてなしてくれました。呆けた男は彼女の夫で、何もできないが歌だけはうまいと
歌を歌わせます。感涙する宗朝。
でもその夜は家の周りにおびただしいけものの気配がしました。気味の悪い夜でした。
次の朝、女は宗朝を送り出してくれました。
けれど途中、彼は女への立ちがたい妄執にかられ、道を引き返そうとします。
そこに昨日の馬を売りにつれて行った男が戻ってくるのです。
男は、あの女の素性を話してくれました。
女は不思議な魔力があって、あの美貌に寄ってきた男たちをもてあそんでは、その魔力でムシやケモノに
変えてしまうのだと。昨日売りに出した馬は、実は宗朝の探していた薬売りの男だったと。
道筋で纏わりついてきたムシたちは、彼女に姿を変えられた、哀れな男たちだったのです。
宗朝もあやうく煩悩に負けて、ムシにされるところだったのです。
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危なかったぁ~~~・・・・・・・・。
女が人里離れたところで魔力を使い、男たちを人間ではない者に変化(へんげ)させてしまう・・・
というのは、ギリシア神話のキルケに似ています。→ http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-06-17-7
でも能楽家の家系に生まれた鏡花は、登場人物を能楽と同じようにその役割を明確に振り分けることによって、
より幻想的で、ゾクゾクするほど妖艶にしています。
人間は弱いものです。
ムシやケモノに姿を変えられてもなお、女を忘れられずに家の周りに棲む男たち。
妄執によって身を滅ぼす・・・・恐ろしや~~~~>_<;;;
恐ろしい~っ(ーー;;;
美貌とか魔力とか うらやましいですが、そんな風に使うなんて・・・って思いました。
by sonoka (2011-09-23 00:13)
to niki
自慢じゃないけど、ボクはきっと
ムシかケモノに変えられちゃうだろうね。
まあ、そう言うことだよ。
by achille (2011-09-23 10:08)
世の中、そんなに美味しい話はないということですね・・・・(^_^;)
by seawind335 (2011-09-23 11:34)
妄執断ちがたく戻っていく宗朝が、馬を売りにつれて行った男に逢わなかったら、ムシかケモノになっていたのでしょう!
その男は妄執に捉われなかったのですかね。
朴念だったのか?あるいは仏が姿を変えて、仏徒を守ったのでしょうかね・・・
by 般若坊 (2011-09-23 15:56)
>女はそれらを邪険にあしらいます。
うーむ、それでもついていくのかぁ。
わたしだったら...誘惑にすぐ負けて...ああ、あとは豚だろうか(笑)
by ナツパパ (2011-09-23 17:10)
うわ~・・
このお話を、日本昔話で観てみたいです^_^;
by fu-u (2011-09-24 21:43)