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ワルママのムスメ [l'histoires de femmes]

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白雪姫やシンデレラのように、けなげな主人公が継母にいじめられる話はたくさんあります。
でも、継母でもけっこうウマが合えばうまくやっていけるものです。

これがもし、実の母親だった場合の話をしてみましょう。

自分のヨクボウだけのために生き続ける女は、母親になるのは向いていないようです。
たとえば、フランス史上に残る稀代の悪女・イザボー・ド・バヴィエール。
自分の息子に王位を譲るのを嫌がって、息子を愛人の子供だから相続の権利はないと言い放ちました。
西太后も、自分が贅沢で美しい暮らしを続けるために、実の息子を殺したようなものです。

これがもし、母と娘だったら?

しかも、母がものすごいジコチューなワルママで、娘を憎んでいたとしたら?

(屮゜Д゜)屮 アワワ;;;;

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今回は、ワルママはアングレーム伯の未亡人でフランス王フランソワ1世の母、ルイーズ・ド・サヴォワ
と、その娘でフランソワの姉のマルグリットについてです。

ルイーズはサヴォワ大公の娘として生まれ、11歳の時にシャルル・ドルレアンと結婚しました。
そしてマルグリットとフランソワを生みましたが、夫が急死してなんと19歳で未亡人になってしまうのです。

それからの彼女は息子を王位につけることに心血を注ぎました。
それが彼女の生きる原動力のようなものでした。

彼女の望みは実現します。
愛する息子はフランソワ1世としてフランス王となるのです。

その後、人生の目標を(達成したために)失った彼女は、あちこちに愛人を作り始めます。
狂い咲きです。息子の愛妾と、ひとりの男を取り合ったこともありました。

さて、娘のマルグリットのほうです。
彼女は幼いころから2つ年下の弟と仲良く育ちました。
弟は文学少女だった姉の影響をうけて、文学好きになりました。

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彼はいつも姉のあとをついて回ります。
母は、それが面白くなかったのです。

姉にべったりの息子。
母の嫉妬は自分の娘に向けられます。
だからなのでしょうか? 宮廷でも悪評高いアランソン公シャルル4世と結婚させてしまいます。

・・・ふつうの母なら、娘にはよい相手と結婚してほしいと思うものでしょう?

ところで、以前にルイーズ・ド・サヴォワに惚れ込まれて結婚を断ったために、祖国を捨てて敵に寝返った
大元帥の話を書きました。本日の4番目に再UPしておきましたので、お暇な方は読んでみてくださいね。

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このシャルルはフランソワの結婚式でその母ルイーズにひとめぼれされちゃったわけですが、
実は彼は、幼馴染だったマルグリットと再会して、ちょっといいなと思うのです。
マルグリットのほうも美男の誉れ高い彼に再会してキュンとなります。

お互いに既婚者でしたが、ほのかに恋心を抱きました。でも・・・・

邪魔したのはマルグリットの母のルイーズ!

14歳年下のシャルルを、権力をちらつかせてモノにします。
娘の初恋の相手を奪う母・・・

母の恋人を奪った娘もよくいますが(サンドからショパンを奪おうとしたサンドの娘とか)・・・
母と娘が女として男を奪い合う、すごいですね。


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マルグリットは対抗していないですが。
そのうち、体が弱かったシャルルの妻が死ぬと、ルイーズはシャルルに結婚を迫るのです。
でもシャルルは断ります。ルイーズは権力を得るために利用しただけにすぎず、彼にはルイーズに
愛はないからです。

フランス王の母である自分のプロポーズを断ったことに激怒したルイーズは、シャルルを徹底的に
破滅させようとします。しまいには彼を敵国に逃亡させることになります。

感情だけで行動すると、ろくなことになりません。
敵国に逃亡したシャルルはその後、フランスと戦ってフランソワ1世を生け捕りにしてしまうのです。
(そのあいだ、ワルママが摂政を務めていました。)

ちょうど(?)その頃、マルグリットの夫が死んでしまいます。
フランソワ1世が敵に捕らわれたことを、一緒にいた彼が妻(マルグリット)と姑(ルイーズ)にひどく
非難されたため憤死したとか。

マルグリットは愛する弟の奪還のために、スペインへ向かいます。
でもフランソワ1世、捕虜でも丁寧に扱われていて、その上敵の神聖ローマ帝国皇帝カールのお姉さん
が未亡人だったのを、うまいこと落としていたのです。

かくてスペインで、マルグリットはシャルルと再会します。
たぶん、二人はここで結婚を誓い合ったのかもしれません。

シャルルはフランスに戻りたいと思うようになります。
フランソワ1世を返す条件に、ルイーズが取り上げた自分の全財産を戻してくれるようにと条件を出します。

結局、フランソワ1世はカールの姉をお妃にして、自分の子供を人質にさしだすことで無事(?)帰国します。
するとシャルルの財産を戻すという条件だけが、ワルママのルイーズによって反故にされてしまいました。

そしてワルママは今度は娘をナヴァル王に嫁がせます。
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初恋は実らないのですね・・・。

マルグリットはシャルルとの結婚をあきらめて、ワルママの政略結婚にしたがいました。
ところが、これが彼女に幸せをもたらすことになりました。

ナヴァル王エンリケ2世はとても彼女を愛してくれたようです。
彼女はここで王妃として、好きなことを好きなようにすることができました。

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彼女の好きなもの。それは、文化活動です。

片田舎ながら多くの芸術家たちを庇護したことで、フランス・ルネッサンス期を作り上げることになったのです。
しかも彼女はメディチに嫁いだエレオノーラのように、庇護者としての立場にとどまらず、文学作品を
残す文人でもありました。

彼女の産んだ娘はのちにあらゆる意味で「偉大な」フランス王・アンリ4世を生みます。

a.marguerite d'Angoulême3.jpg


それにしても「友達母娘」なんて言葉も最近はあるようですが、ルイーズ・ド・サヴォワとマルグリットの
ような、前世は敵同士だったのではないかと思われるような母娘も、存在するのですね・・・。
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kana

白雪姫の母親も、原作では「実の母親」なんですよね。
by kana (2012-09-17 01:20) 

su-nya

日本では「親子丼」などというあまりお上品ではない言い方もありますが、歴史に見る毒母はすごいですね…
by su-nya (2012-09-17 05:17) 

ja1nuh

ひえーワルママ怖いですね。 
by ja1nuh (2012-09-17 09:03) 

水無月

すごい話ですね…怖いなぁ(>-<)
by 水無月 (2012-09-17 09:29) 

大林 森

どんな時代でも悪い人は居るんですねえ・・・。(;゚ω゚)けどこれもう、ドッロドロの昼ドラの世界ですね!((((゜Д゜;))))
by 大林 森 (2012-09-17 09:47) 

PATA

実の親子だからって愛があるとは限らないのですね・・・。
by PATA (2012-09-17 22:19) 

さうざんバー

複雑な人間関係ですね~(--;) 前世の因縁を信じてしまいそうになるほど、スゴイ関係ですね(^^;) 救いは、娘さんが最後は幸せになってそうなことです(^^)
by さうざんバー (2012-09-17 22:43) 

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