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4人の夫を持った王妃、でも愛したのは1人。 [l'histoires de femmes]

a.Catherine Parr1.jpg

一般的に、たくさんの結婚歴や離婚歴があれば「恋多きひと」と思われがちですね。
でもそれは一概にそうとも言えないです。

たくさん結婚したからたくさん恋愛をした・・・・それはウソ!
だって、結婚の数と恋愛の数がかならずしも比例するわけではないのです。

たくさんの恋愛遍歴を経てたった一回だけ結婚する人もいれば、何度か結婚しても、本当に相手を
愛したことはなかった・・・という人も、世の中にはたくさんいるはずです。

a.henry8.jpg

英国でたくさんの結婚をした王様といえばヘンリー8世がすぐに思い浮かびますが、この、6回の結婚をした王の
最後に娶った妃もまた、4度の結婚歴を持つ、英国史上結婚回数が一番多い王妃でもあります。

彼女はキャサリン・パー。
処刑されずに済んだ、最後の王妃でした。

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さて、その前におさらいです。
ヘンリー8世の1番目の妃はキャサリン・オブ・アラゴン。
早逝した兄の妻だったのを娶りました。しかし、メアリー王女しか生まれなかったので離婚。

2番目はアン・ブーリン。キャサリンの侍女でした。彼女もエリザベスしか産めなかったので、離婚、
無実の罪(姦通罪)を着せられて処刑されました。

3番目はジェーン・シーモア。王子をやっと産んで、これからというときに亡くなってしまいました。

4番目はアン・オブ・クレーブス。フランダースのクレーブル伯の王女でしたが、肖像画と違うとヘンリーが
駄々をこね、すぐに離婚されてしまいました。

5番目はキャサリン・ハワード。小悪魔的美女で、元彼とよりを戻して姦通罪で処刑。この人は2番目の妃
アン・ブーリンの従妹でした。

・・・アン・ブーリン以外の王妃たちのことは、後々お話します。
さて、6番目はキャサリン・パー。

a.Catherine Parr4.jpg

エドワード3世の血筋の田舎貴族出身で、16歳で最初の結婚を、21歳で二度目の結婚をしましたが、
どちらも夫とは死別しました。特に二番目の夫は彼女が30そこそこなのに70を超えていたそうなので、
無理もないですが。とにかく、莫大な財産を若い妻に残して病死したそうです。

彼女は特別目立つほどの美人ではなかったのですが、知性があり、思慮深く心優しい女性でした。
だから、5番目の妻が処刑された後の50歳のヘンリー8世が彼女に目を付けたのです。

2番目の夫なき後、彼女には初めて、心から愛する男性が現れました。
トマス・シーモア。そう・・・ヘンリー8世の王子を産んで女の栄華を極める目前で亡くなってしまった、3番目の妻
ジェーン・シーモアの兄です。

a.Thomas Seymour, 1st Baron Seymour of Sudeley.jpg

イケメンで仕事もできて、品性も知性もある完ぺきな恋人。
自分の意志で初めて愛した男性です。
二人が仲睦まじい様子を見て、ヘンリー8世は嫉妬したそうです。そして二人を引き裂くために、トマス・シーモアをブリュッセルに行かせてしまうのです。

悲しむキャサリン。
王は、彼女に求婚しました。

a.Catherine Parr2.jpg

キャサリンは抗っても何の意味もなさないことを理解する賢い女性でしたから、諦めてこの申し出をおとなしく
受けたのです。

彼女はまず、メアリー、エリザベス、エドワードの3人の子供たちの世話を献身的に始めました。
心さやしく、慈愛に満ちた彼女のことを、子供たちは心から愛したそうです。
キャサリンは4,5か国語を流ちょうに操るマルチリンガルでしたから、子供たちの教育にも熱心でした。

のちにエリザベスが王位についてマルチリンガルでグローバル志向になったのも、この継母の影響が
強かったと言われます。

私生児扱いのメアリーとエリザベスの王女としての権限を復権させたのはキャサリンでした。
幼いエドワードも含め、みな母の愛に飢えた子どもたちです。
キャサリンはこの三人の子供たちをいつくしみ育てました。

王との関係も順調で、これは年老いた前夫で慣れていた(?)おかげでしょうか、梅毒からの腫瘍の痛みで
苦しむ王の足をさすったり、痛みで癇癪を起すのをなだめたりする一方で、政治的手腕も発揮して、王が
フランスに遠征の際には、国王代理まで勤めていました。

歴代の王妃たちは離婚か処刑でしたが(ひとり産褥死)、彼女はどちらでもなく、王をみとった最後の王妃と
なりました。

さて、王の死後すぐに、彼女は昔の恋人、トマス・シーモアと再会、再びよりを戻します。
35歳のシーモアにしても、31歳の未亡人で莫大な財産を手にしたキャサリンは、申し分ない恋人でした。
彼らは周囲の反対を押し切って、王の死後結婚してしまいました。

結婚=ハッピーエンドは、おとぎ話の中だけのようです。

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キャサリンは王の娘エリザベスを引き取って育てていました。
14歳になったやせっぽちの女の子は、母の愛も父の愛も知らずに育ったせいか、やがてこの色男の継父に
あこがれを抱き始めます。そう・・・それに、エリザベスだってあの小悪魔アン・ブーリンの娘なのです。

キャサリンが妊娠仲だったある日。
キャサリンは夫と継娘がただならぬ関係になった場面をちょうど目撃してしまいました。

エリザベスにしてみれば、ただ単に大人の男性への憧れと、敬愛する継母への強い憧れと、少しの好奇心
だったのかもしれません。でも取り乱すことなくただ心を閉ざした継母を見て罪の重さを感じ、エリザベスは
自分の領地に去っていきました。

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キャサリンは愛する夫と継娘に裏切られたショックで、しだいに精神を病んでいきました。
妊娠中に何度もうなされては、夫の所業を呪ったそうです。

そしていよいよ出産のとき、女の子を産み落とした後に産褥熱に陥り、生死の境をさまよった6日後に、
命を落としてしまいました。

a.Catherine Parr7.jpg

彼女の莫大な財産は、生まれたばかりの娘と夫に残されました。
しかし翌年には、トマス・シーモアは謀反の疑いで処刑されました。

二人の間に生まれた女の子も、2歳ほどで亡くなったようです。
・・・結婚運のない女性だったのかもしれないですね。


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Hirosuke

結婚って一体…。

by Hirosuke (2012-02-20 05:59) 

旅爺さん

愛も結婚も人様々ですね。
by 旅爺さん (2012-02-20 11:02) 

【みなと】

こんにちは。まさしく「事実は小説よりも奇なり」のお話ですね(^^;
茨城県付近ではまだまだ強い地震が続きます。お互いに気を付けましょう。
by 【みなと】 (2012-02-20 12:55) 

たいちさん

ヘンリー8世については、映画やドラマによく出てきますね。私は「The Tudors 背徳の王冠」というテレビドラマのファンで熱中して観ていました。
by たいちさん (2012-02-20 13:14) 

sfj-monkey

こんにちわ。仕事が忙しくなって本来のウイークエンドサーファーに戻ってしまい、メインのブログも週2程度しか書かない状態に…。久しぶりにNIKIさんのブログを見ると、一体いくつ更新されているんだろうって、驚いてます。よくネタが次から次にまるで泉のようにわいてきますね。すごいです。
by sfj-monkey (2012-02-20 17:41) 

しばちゃん2cv

ヘンリー八世って先日の記事にも出てきましたね。
ところでヘンリー八世の歌ってご存じですか?

もしかしたら、過去の記事で出てきているかもしれませんけど。

 ↓ youtube です。

http://www.youtube.com/watch?v=LVv9uitiB9w

歌詞はヘンリー八世を茶化してます。

「ヘンリー八世君 歌詞」 で検索してみてください。
by しばちゃん2cv (2012-02-20 22:00) 

non_0101

才能もあって愛を見つけた人だったのに、
愛に裏切られてしまったのですね(T_T)
by non_0101 (2012-02-23 08:39) 

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