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ファッション・アイコンとしてのヴィクトリア女王 [なんちゃって博物誌]

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大英帝国の最も輝かしい時代の統治者といえば、ヴィクトリア女王でしょう。
「君臨すれども統治せず」」といわれたソフトな政策で、長い繁栄を築きあげました。
今回は、政治的なこととは無関係に、ファッション・アイコンとしての女王についてです。

3歳まで、彼女はドイツ語で育ちました。
生まれて間もなく老いた父が亡くなり、母国語がドイツ語である母と生活していたためです。その後、
英語をはじめとして、まだ幼いうちにいくつかの外国語を習得しました。

叔父たちが子もなく次々と亡くなったため、18歳で王座がめぐってきます。
この肖像画はウィンターハルターの描いた「即位の日のヴィクトリア女王」です。
ステュアート・サファイアを正面に飾り、その上には「黒太子のルビー」と呼ばれる巨大なレッドスピネルが
飾られた王冠をかぶっています。このスピネルは、長い間ルビーだと勘違いされていました。

若い女王が好んだ宝石は、ガーネットです。
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明るい赤の宝石を好んで身につけたと言います。
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玄孫エリザベス2世もつけているティアラ。

21歳で母方のいとこで1歳年下のアルバート公と結婚します。
女王は求婚されることはできないために、自らアルバート公に求婚したそうです。
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彼女は純白のウエディングドレスを初めて世に広めた人です。
オレンジの花輪は、多産の象徴だそうです。
重いマントをまとわない、このような花嫁姿は、中流階級の女性たちの間で流行していたスタイルを取り入れたものでした。

王室の人気を回復するために、女王はこのような花嫁姿をしたといわれています。
これにより、ヴィクトリア女王の人気は急上昇、親近感を抱いた世の女性たちは彼女の真似をし始めます。
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19世紀、イギリスでは産業革命によって、資本家がたくさん生まれます。
これによって貴族でなくてもお金持ちな人たち、中流階級が生まれてくるのです。
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中流階級の女性たちは、ほしいものを手に入れるに足りる財力を持っていました。
だから女王が身に着ける宝石やそのデザインは、すぐにミドルクラスの女性たちに流行りました。
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エトルリアやケルトで遺跡が発見されたことにより、古代風のデザインが人気になりました。
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あるいはゴシック風のデザインが、そして1860年代には南アフリカにダイヤモンドの鉱脈が発見されたことにより、ダイヤも大流行しました。

vic12.jpgおもに、ロマンティックでナチュラルなデザインが好まれたようです。女王が好んだという蛇のデザインの装身具や、鳥や虫をかたどったアクセサリーもたくさん作られました。

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前に紹介した、REGARDやDEARESTが流行ったのもこのころでした。明るいブルーを基調とした七宝も流行りました。

ファッションだけではないのです。
まだ英語に不慣れな夫にはドイツ語で話しかけ、夫が寂しくないように、ドイツの習慣であったクリスマスツリーを飾りました。そしてクリスマスツリーを飾る習慣が、イギリスに広まったのです。

21年後、夫が亡くなると、ヴィクトリア女王は喪服しか着なくなり、公式の場にもほとんど姿を見せなくなります。
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身に着ける宝石も、「モウニングジュエリー」と呼ばれる、愛する人の死を偲ぶものに変わりました。これまた大流行。ジェットという木の化石やフレンチガラスでできたジュエリーです。
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お暇なときにどうぞ、ジェットのうんちく
↓      ↓      ↓      ↓
http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-04-14-21
(モウニングジュエリーについては、また別の機会に詳しく書きますね^^)

産業革命によって装飾品も大量生産されるようになりました。
市民も資本さえあれば、宝石を身に着けられる時代になったのです。

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物静かなひとつ年下の夫の助言をよく聞き、国民に愛された女王。
9人の子供たちはドイツを中心に血縁を広め、「ヨーロッパの祖母」と呼ばれました。
円満な家庭生活を築き、国を統治した女性として、マリア・テレジアと並び称されます。

一方で、血友病の遺伝子を保持するために、男系は早世するという悲しみもありました。
(ラスプーチン事件の発端となった血友病の皇太子アレクセイは、彼女のひ孫にあたります)
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そして時代の変革期のファッションアイコンとしても、欠かせない人物でもありました。
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(ちなみにこのエメラルドのティアラ、めっちゃかわいいです♪)





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naimmy

こんなゴージャスな宝石,
一瞬だけでいいから,身につけてみたい♪
by naimmy (2011-05-31 00:03) 

nachic

装飾品から見たヴィクトリア女王とイギリスの歴史。
面白く読ませていただきました。
by nachic (2011-05-31 00:16) 

ぷりん&りく

女王か、、、綺麗なアクセたくさん持ててうらやましス♪vv
ヴィクトリア女王わ、、今でいうファッションリーダー?!!^^
色んな美容法がありましよね☆
なかなか手の込んだ事までわ出来ない・・・ってのがアカンのか^^;;汗・・
by ぷりん&りく (2011-05-31 01:12) 

ねじまき鳥

さすが王室ですね。
ティラアも豪華!

by ねじまき鳥 (2011-05-31 01:20) 

(。・_・。)2k

最後のティアラ本当に可愛いね(^^)

てかイトコかぁ~ 
確かに別嬪さんも居るけど、、、
考えづらいな(^^;
by (。・_・。)2k (2011-05-31 04:14) 

淳司

ヴィクトリア女王の事って何も知りませんでした。
とっても愛された女王様だったんですね!
何処かの国の国民に嫌われてる首相様とは、
全然違いますね・・・(@@)b
by 淳司 (2011-05-31 04:36) 

yu-papa

若い時に好まれたと言う宝石が、
               ガーネットとは嬉しい限りです・・・
何故かと言うと、私もガーネットがと言う宝石が好きなもので❤

そう言えば現エリザベス女王は、よく帽子をおかぶりですが・・・
その帽子のデザインと製作は、一人の日本女性だそうです♪
他のデザイナーに任せることなく・・・・
現在においても、その日本女性のデザインする帽子を使われた居られます
by yu-papa (2011-05-31 06:12) 

ナツパパ

若い頃はけっこうやんちゃなお嬢さんだったそうですね。
でも結婚したらご主人一筋...惚れてたんですねえ、きっと。
チャールズさん、見習いなさいよっ!
by ナツパパ (2011-05-31 08:20) 

ポピイ

niceありがとうございました。
勉強になりました!宝石たちすごいかわいいです。
もう一回みちゃいます。
by ポピイ (2011-05-31 08:51) 

ゆず香

朝から目の保養させて頂きました(^。^)
by ゆず香 (2011-05-31 09:06) 

arles

エメラルドのティアラ、確かにめっちゃかわいいです
by arles (2011-05-31 10:30) 

emuzu

うわッ、、、すッごい派手な喪服( ̄十 ̄)アーメン・・・
by emuzu (2011-05-31 16:53) 

yoshinonoko

ほんと、エメラルドのティアラとても可愛いですね^^
一度でいいからティアラの似合う女性になってみたいな❤
by yoshinonoko (2011-05-31 19:49) 

ラブスコール

イギリスのクリスマスツリーを飾る習慣が、そういうところから
来ていたとは、知りませんでした。
血友病についても、なんだか、興味があります。いろんな意味で。
宝石かぁ。。。なんかわたしは、可愛いのが2つくらいあれば
いいかなぁ(^^;)
by ラブスコール (2011-05-31 20:52) 

ぴーすけ君

どれもステキですね~。
by ぴーすけ君 (2011-05-31 21:06) 

rtfk

ヨーロッパの王室のお話は興味がつきません(^w^)
by rtfk (2011-06-01 09:17) 

お針子姫

エメラルドのティアラ、かわいいフルーツみたいですね。
こんなのほしいなぁ・・・。
by お針子姫 (2011-06-02 00:51) 

Hirosuke

最近「ベルばら」を読んでます。

平和と民衆に心を砕いた偉大なオーストリア女王マリア・テレジアを知りました。

テレジアの娘マリー・アントワネットは劇的に改心したものの、時すでに遅く…。

それと並び称される程のヴィクトリア女王。

彼女に求婚され、その死後も愛された夫。

イギリス絶頂期の象徴なんですね。

by Hirosuke (2012-07-30 06:11) 

daimuran

これは面白かったです。感謝。
by daimuran (2012-07-30 06:35) 

sadafusa

この絵もヴィンターハルターだったのですね・・・・。

アルバート公爵ってやっぱりヴィクトリアが
惚れて惚れぬいたっていうだけあって
お写真みてもハンサムですね・・・。

この時代昆虫をモチーフにした宝飾品って多いのだと思うけど、
トンボや蝶々ならともかく、
この間のエリザベート展ではなんと!「ハエ」の髪飾りがありました。
ひえ~、この感覚絶対おかしいやろ!と思いました。

まあね、エジプトじゃフンコロガシのスカラベが高貴な虫だと
珍重されていたみたいですけど、

それでもわたくし絶対に何度生まれ変わろうと、
それでもたぶんゴキブリのブローチとか髪飾りとか
絶対にお断りです! 笑
by sadafusa (2012-10-27 09:15) 

su-nya

博識なnikiさんのブログで、
美しい画像とともにたくさんの学びをいただきありがとうございます☆

ヴィクトリア女王は、気難しい顔の写真のイメージしかなかったのですが、
幸せな結婚生活、ファッションアイコンとしての一面、
意外でした。

それにしても、美しいジュエリーの数々、
私はあまり宝石には興味がないほうなのですが
(オパールの魔力にだけはちょっとくらっとします)
見ているとうっとり…してきますね。


by su-nya (2012-10-27 23:57) 

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