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ロマ [なんちゃって博物誌]

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かつてジプシーと呼ばれた放浪民たちは、今ではロマと呼ばれるのが一般的です。
「エジプトのファラオの気高き末裔」を自称する一派から生まれたのがこのジプシーという呼び方のようですが、ヨーロッパでは地方によって呼び方は様々ですし、一概にロマと言ってもいくつものグループに細分化すれば、やはり呼び方が異なってきます。

彼らの言葉はロマニ語。文字を持たなかったため、昔の経緯は文献がありません。


DNAで見ると、彼らのルーツはインド北部にあるそうです。
たぶん、何らかの民族闘争があり、自由を求めてヨーロッパ方面に旅立った人々がロマになったようです。

音楽、踊り、あるいはクマ使いなどの芸能を生業として、あるいは金工、武器職人鍛冶職人として、大陸を気ままに放浪する人々? いいえ、彼らはヨーロッパにおいてけっしてよいとは言えない扱いを受けてきました。




1000年ごろ、インド北部から音楽を生業とした人々が西へ旅立ちました。
彼らはカーストに含まれない、あるいはカースト下層民でドムと呼ばれていました。

どこへ向かったか。
これによって彼らの運命は様々でした。


一番幸運だったのは、ロシアの宮廷に合唱団として雇われたロマたちでしょう。
エカチェリーナの愛人オルロフの兄である伯爵が作った合唱団です。

彼らはロシアの芸能や文化に多大な影響を与えました。
ロマ女性を妻にした貴族も多かったようです。
音楽家や文学者たちが、彼らを題材にした多くの作品を残し、ロシアの民族音楽にも強い影響を与えました。

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彼らは「黄金軍団」と呼ばれるくらいのよい待遇を受けていましたが、のちのロシアに編成される北部地域のロマたちは飢餓と貧困に苦しみ、ひどい生活をしていたようです。


各地の戦争や紛争に巻き込まれながらもあまり語られないのは、彼らが奴隷とされたり、定住民か放浪民か、もしくはキリスト教徒かそうでないかで扱いが違ったり、ずっと差別を受けてきたりしたからなのかもしれません。

人をだまし物を盗み、油断のならない人々、というステレオタイプを植え付けられた彼らは、差別と貧困に苦しんできました。

マリア・テレジアの啓蒙思想によって、定住化が厳しく義務化されたり、各国で同様に定住か国外退去を求める厳しい法律が作られました。

識字率を高めるためにと定住化させて学校に通わせるという政策もなされましたが、彼らが通える学校はごくわずか、教師も一つの学校に一人くらいだったようです。

彼らは自分たち以外の人々をガージェと呼びましたが、ガージェとロマの結婚は禁じられました。
16~17世紀のワラキアヤモルドヴァでは奴隷化されてロビと呼ばれ、まるで商品のように取引されたと言います。




ロビの値段は年齢、性別によって裁判所が決定したそうです。
ロビがロビ以外と結婚すれば、国外追放。
女性奴隷が主人の慰み者になったときは、主人が死ねば自由になりました。
子供たちは両親から引き離されて売買されました。


スイスでは奴隷売買ではありませんが、定住させ教育を受けさせ啓蒙するために、子供を親から取り上げて、キリスト教徒の家庭に養子に出したそうです。

キリスト教は占いを禁じましたが、フランスでは初めは貴族の暇つぶし、のちに庶民にも一般的にロマ女性の占いが広まり、一時ブームを巻き起こしました。

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ヨーロッパから遠く離れた日本人からすると、遠すぎて見えないというか、あまりにも彼らについての情報が少ないから、良く知らない人が多いのが普通ですよね。


差別もいじめも、規模が違うだけです。

ひとは自分と他者を比べることで、優越感や劣等感を感じます。
マジョリティが圧倒的に有利な世の中ですが、自分たちと違う主義や生活習慣を持つ人たちを差別することは、正しいこととは言えないと思います。

もちろん、人は社会的な生き物なので、他者に合わせるということも大切です。
しかし、マイノリティを差別して貶(おとし)めてもよいということではないと思います。

私も海外でアジア人嫌いの人たちから差別を受けたことがあるからこそ、差別される側の気持ちを考えなければいけないなと思うようになりました。

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「こうしたほうがいい、あなたたちのためだ」という親切心から、定住化させようとしてきた人たちもいたのかもしれません。自分たちには理解不能だから、恐ろしさを感じてねじ伏せようとした人たちもいたのかもしれません。


親切心であっても、根拠のない優越感であっても、相手の人権を蹂躙(じゅうりん)するようなことはいけないと思います。

一番罪なことは、無知な思い込みで差別的なことを平気で口にする事だと思います。
無知なまま外部から得た情報をよいことだと思って、差別用語を口にして面白がっている人も多いです。

メディアとか一部の偏った思想とかの人たちが言ったり書いたりしたことをうのみにして、他者を差別することは愚かなことです。

アジアでもそうだし、日本の中でだって、共同体の中でだって、言えることです。
ヘイトスピーチは、恥ずかしいからやめてほしい。

日本に対して同様の行為を行っている人たちも大勢いるけれど、そんな人たちは相手にしてはいけないと思っています。相手にすれば、自分をその人たちのレベルまで貶めることになるからです。



「あいつはダメなやつだ」と決めつけて阻害すれば、その人は行動が制限されてその評価に見合うようにしか行動できなくなります。周囲がその人をダメにしていることもあるのです。

ヨーロッパでの彼らの苦難の歴史を紐解くと、様々なことを考えさせられます。
500年以上も差別され続けているのです。



人を国籍や民族や人種や主義の違いで、偏見や差別を持たないこと。
国や政治家たちの思惑はまったく違うことも多いですが、一般人にとっては差別は何の利益も産まないと思います。(政治家にとってはお金を産むこともあるようですが)

虐殺やひどい差別を恐れ、ロマであることを隠す人たちも多いため、その人口を正確に知ることは難しかったようです。

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今でも差別は続いています。
しかし、逆境のなかでも苦労を重ねて名を成した人たちもたくさんいます。

あるいは、先祖の血を誇りに思い、そのルーツを明らかにしている人たちも多いです。
芸術、芸能分野で有名になった人たちは多いですが、政治家や学者もたくさん出ています。

チャップリンは母方がロマですね。
ラフカディオ・ハーンも、ビル・クリントンも、ルーツがあるようです。

風のように自由気ままに大陸を駆け巡るボヘミアン・・・そんなイメージにあこがれるという人も多いでしょうけれど、次回は彼らのもっとも大きな苦難、もう一つのホロコーストについてお話ししたいと思います。




ぷりぷり。

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大洗で食べたカキフライ。

めちゃ大きくてぷりぷりでした。


「海のミルク」と言われますが、小さいころはちょっと苦手でした。
でも今は大好物に分類されます(笑)。


血中のコルステロール値を下げるとか、女性にはうれしいアンチエイジング
美肌成分が含まれているそうです。


レモンを絞って塩をがりがり擦りかけて食べるのが好きです。
でもタルタルソースもいなぁ・・・・。


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