memento mori, memento vivere [なんちゃって博物誌]
わっか わっか バラの花輪
ポケットの中には花びらいっぱいいれよ
ハックション! ハックション!
みんな死んじゃうよ!
”Ring-a-Ring-o' Roses”という、童謡です。
日本の『かごめかごめ』や『はないちもんめ』のように、童謡にはしばし恐ろしいいわれがあります。
一説ではこの歌も17世紀にロンドンで大流行したペストを歌ったものだそうです。
ペスト。
黒死病ともいわれ、ペスト菌のキャリアのネズミの血を吸うノミが人間に感染させる、中世においては死に至る病でした。古代から見られた疫病でしたが、14世紀のヨーロッパでの流行が有名ではないでしょうか。
最盛期にはヨーロッパの人口の四分の一がペストによって死亡したと言われます。
高熱、赤い斑点模様、幻覚や幻聴が起こり、リンパ腺が腫れあがります。
発病すればほとんどが3か月以内に命を落としました。
バラの花束を手に、ポケットにはバラの花びらをいっぱいに詰め込んで、人々は歩いたそうです。
これだけ聞けばロマンティックな気がしますが・・・バラの香気で周りの死臭をごまかし、ペスト自体をも防ごうとした模様です。
ハクション!はくしゃみですが、音が「灰(アッシュ)」から転じたものだそうです。
最後は”We all fall down"なので、歌いながらしゃがむのかな? 倒れる、転ぶから、なにか死を連想させます。
昔々、古代ローマにおいては、人々は「メメント・モリ」という言葉を、「カーペ・ディエム」と表裏一体の言葉として認識していたようです。
ラテン語を知らない人でも、この二つは聞いたことがあるかもしれませんね。
「メメント・モリ」=「死を想え」
「カーペ・ディエム」=「いまを生きる」
正反対の言葉のように思えますが・・・
これが中世のヨーロッパでは、天災や疫病の流行により、無常観につながったみたいです。
日本でも鴨長明が大飢饉や天災の続いた様子を、無常観をもって述べていますね。
大飢饉の記述は、高校の古文で勉強しましたが、鬼気迫るレポートになっていますよね。
今を生きよ、人生は永遠ではない。
ほんの瞬く間の儚い生を楽しみなさい。
やがて訪れる永遠の死のために。
そんな感じでしょうか。
そして、オクスフォードの教授にして詩人であった、エドマンド・ブランデンのことば。
memento viere(生きていることを 忘れるなかれ)。
第一次大戦の塹壕の中で、ドイツ軍の砲弾が雨のように降る時に、
脳裏をよぎった言葉だそうです。
さて、話を戻します。
飢饉、大地震、洪水などが続くと、人々は悲壮になります。
くわえてペストの大流行。
この世の終わりか?と。
死は金持ちにも貧乏人にも同様に、平等に訪れます。
どんなにお金持ちであってもいつかは死ぬ。
年齢も性別も関係なく。
でもそれが今日明日なのか、何十年も先なのかは誰にもわからない。
死への恐怖は、『死の舞踏』という寓話を生み出しました。
身分に関係なく、すべての人が死を恐れて気が狂うほど踊る、というものです。
疫病や戦争のせいで、埋葬が追い付かないほど毎日多くの人々が亡くなりました。
死を想え、と言われても、明日は我が身かと恐れる人々は、葬列や埋葬中に踊り狂ったと言います。
ペストは、空気感染するとも信じられていました。
だから医者や、死者を埋葬するアンダーテイカ―たちは、「防護服」を身につけました。
蝋でコーティングした布を着て、つばの広い帽子に、くちばしのような突起を持つ仮面、そして目の部分に水晶をはめ込んで、眼球までもプロテクトしたのです。
くちばし状の部分には、薬草を詰めたといいます。
何とも非現実的な恐ろしい姿です。
この姿を見て驚きました。
幼いころ、何度か夢の中に出てきていたからです。
いったい、いつ目にしたのかまったくわからないのに・・・
10代のころ、藤原新也さんの『メメント・モリ』を偶然目にしたのも、もしかしたら偶然ではなかったのかも。
インドのガンジス川の存在のすごさ。
生も死も一緒くたになって、生活があり、人生があり、文化になる。
死は生の一部であり、日々の生活の中で死は淡々と、あっけらかんと処理されていく。
日本人は死を忌み嫌うけれど(これが医学倫理にも関連してきますよね)、
お葬式に笑ったり、楽器を演奏したり歌を歌ったりする文化もあります。
写真が発明されたころは、よく撮られたのは死者の顔だそうです。
死は、身近にあっても生きている人間にはさっぱりわからない。
死の向こう側には何があるのでしょうか?
死んだら終わりでしょ、と言えばそうだけれど、それはそれまで。
安らかに訪れるか。
苦しみに満ちて訪れるのか。
ゆるやかに? あるいは不本意に突然に訪れるか。
あぁ、まだ悔いが残るのに~!ぷつっ!と訪れるか。
「メメント・モリ」は死がどういうものかを考えろというのではなく、やがて一度だけ訪れるその瞬間までどのように生きるかを考えろ、だと思うのです。だから「カーペ・ディエム」は刹那的に享楽的にだけ生きろという意味ではなくて、短い生をどう生きるかを考えるといいんじゃない? という意味かなと。
以前、修道僧たちのホネホネをかわいく楽しげに飾ったローマのお寺を紹介しましたが、そういうの、あちこちに結構あるみたいですね。→ こちら
ちなみに、ペストは昔の病気かと思ったら、つい1990年代にも外国で流行したそうです。
日本では19世紀に流行したみたいです。
白ワインに合います
直径40センチほどのひらめ。
スライスガーリックと鷹の爪で香り付けしたオリーブオイルと
ローズマリー、オレガノがなかったから、
セロリとバジルで最後に塩をガリガリすり落とし・・・
新鮮なので縁側までほろほろと身がはがれます。
白ワインにぴったりです^^
(下にアルミホイルを敷いているのは、魚が大きすぎて大皿がなくて、
プラスティックの特大刺身皿にのせているためです)(笑)