破滅の皇妃 [l'histoires de femmes]
アリックスは英国のヴィクトリア女王の孫娘。ドイツのヘッセン公の娘として1872年に生まれました。
彼女がまだ幼いうちに母は夭折してしまいました。
だから彼女は英国の祖母のもとに引き取られて、6歳から12歳まで、かわいがられて育ちました。
だからドイツ語よりも英語のほうが得意。
ヴィクトリア女王は・・・自分の娘たちよりもこの孫娘にたくさん愛情を注いだようです。
アリックスの運命が変わったのは、12歳の時。
姉がロシア大公と結婚することになり、結婚式のためにロシアを訪れた時でした。
12歳の姫君は、16歳の王子様と出会い、お互いにひとめぼれしてしまったのです。
王子様はロシアの皇太子ニコライ。
若い・・・というか、幼い二人の一途な思いを邪魔したのは、国籍ではありませんでした。
身分と、そして何よりも宗教。
ロシア正教徒であるニコライ王子は、ロシア正教ととしか結婚できないのです。
祖母のヴィクトリア女王はこの孫娘に、もしあなたが彼を本当に愛しているならば、結婚するべきだと
アドヴァイスしたといいます。
自分も好きな相手と結婚したからこそ、そう言えたのでしょうね。
かくしてドイツの小さな領地の姫君は、ロシア正教に改宗し、22歳でロシア皇太子の花嫁になりました。
そのときに名前をアリックスというドイツ名から、アレクサンドラというロシア名に改名しました。
皇太子はニコライ2世としてロシア皇帝に即位しました。
皇妃は4人の皇女を産みました。そう、4番目はあのアナスタシアですよ。
そしてやっと32歳の時に待望の皇太子を産みました。でも・・・・
実は、ヴィクトリア女王には男子にだけ現れる血友病の遺伝子があって、それが孫のアレクサンドラの産んだ
皇太子アレクセイに受け継がれてしまったのです。
ちょうどそのころ、ロシアには評判の僧侶がいました。
ラスプーチンといって、農民の生まれながら奇跡を起こすと評判の僧でした。
病気の子供のためなら、藁をもすがる気持ちだったのでしょう。
アレクサンドラはラスプーチンを宮殿に招くのです。
すると・・・・
ラスプーチンがヒーリングすると、苦しむアレクセイの呼吸が整って、安らかな寝息にかわります。
ラスプーチンが祈祷をすれば、アレクセイの病状自体がよくなるのです!!
アレクサンドラは、次第にラスプーチンに傾倒していきます。
彼女の機嫌を損ねることをもっとも恐れている皇帝も、なにも言えません。
僧侶とは名ばかり、ラスプーチンは日本で言えば「破戒僧」というものかもしれません。
宮殿では好き放題、やりたい放題に振舞います。
もしかしてアレクサンドラは、、今でいうマインドコントロールでもされていたのかもしれませんね。
ついには政治にも口出しをするようになってきたために、彼を忌々しく思っている貴族たちの不満は徐々に
ラスプーチン暗殺計画としてかたちを成しました。
ラスプーチン暗殺計画はこちら→ http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-12-10-9
・・・殺される前に、彼は不気味な予言を残します。
もしも農民が自分を殺すならばこの国は安泰だが、皇帝たちが殺すのであれば王朝は滅びるだろう、と。
すさまじい死に方をして間もなく、ラスプーチンのその不気味な予言は現実になります。
ロマノフ王朝に対する不満は革命という形になって現れ、ニコライ2世は一家ごと惨殺されてしまったのです。
アレクサンドラは息子の病気を治すことだけに夢中で、国民の不満や時代の流れを読むことができなかった、
ロマノフ滅亡の一因を作り出した破滅の皇妃と言われています。
確かにそうかもしれないですが、わが子の病気を治したいという母親の愛情は、責められるものではない
ですね。ただもう少し、民衆に対する配慮があればよかったのかもしれないですが。
ダメな皇妃と思われるかもしれませんが、看護師の資格を持ち、第一次世界大戦中は自ら志願して従軍した
そうです。
最後は愛する夫と子供たちとともに銃殺されてしまいました。
自分の子を全力で守ろうとするのは基本ですよね、
そこが出来なかったらそもそもお国の人としての役割なんて果たせないし、
任せられない・・・。
現実は生身の苦しさに誰かを恨みたい、
ほんとにつらい極限状態で誰かのせいにして問題を片づけたいという一面もあって・・・あ~難しいよ~。
by nana_hyr (2012-03-29 10:38)
最近日本の芸能界で話題の「マインドコントロール」を想起しました。
by たいちさん (2012-03-29 10:51)
一概に彼女を「悪」とは言えないですよね・・・。
皇妃としては「悪」でしょうけど、母としては「善」だったわけで(この言い方もおかしいですが)
by しきみ (2012-03-29 15:05)
ヒステリー気質の方だったという説もありますね。
思い込んだら周りが見えなくなるタイプだったのかも。
by ナツパパ (2012-03-29 20:35)