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こんな破滅の愛 [l'histoires d’hommes]

モディリアーニはトスカナ生まれのユダヤ系イタリア人でした。

a.Amedeo Clemente Modigliani.jpg

比較的裕福な家庭に生まれましたが、生来病弱で、たくさんの病気を抱えていました。
学者も輩出している家系の母は、この病弱な末っ子の実を案じながらも、彼の中に芸術的な才能を
見出していました。すでに彼が幼いころ、日記に書いています。

「この子、癇癪持ちだけれど、もしかしたら芸術家になるかも・・・?」

彼は美術学校に通い、彫刻を学びます。
そして18歳で単身パリへ上京するのです。

a.Amedeo Clemente Modigliani.Girl with Braids.JPG

でもすぐに、彫刻家としては体力的に無理だと気付きます。
そして彼はスケッチブックを手にして、画家を目指すことにしたのです。

モンパルナスで多くの芸術家たちと貧困の中、生活します。
外国人の芸術家もたくさんいました。ピカソ、フジタ、シャガール、ゴッホ、キスリング。もちろん、ユトリロら
フランス人芸術家もいましたけれどね。

フジタ→ http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-06-10-5
ユトリロ→ http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-06-03
キキ→ http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-07-10-1

a.Amedeo Clemente Modigliani8.jpg

母のおかげで、文学のベースも持ち合わせていた彼は、豊かな感性を発揮します。
アジア、アフリカの芸術に大きな影響を受け、首の長い、細面の画風を生み出しました。
当時は肉感的な女性が描かれるのが普通でしたが、彼の描く女性はアフリカの彫刻のように首が長く、
アジアの女性のようにほっそりとしています。

a.Amedeo Clemente Modigliani7.jpg

一方では、肉感的な絵もたくさん描いています。
一生に一回だけ開いた個展では、肉感的な裸婦像のせいで警察が踏み込んできたようです。
彼の裸婦像は、現代の美意識で見ても魅惑的な色気がありますね。

でも私は、このほっそりした肖像画のほうが好きです。
彼はほとんど肖像画ばかり描きましたね。風景画はほんの数点。

a.Amedeo Clemente Modigliani5.jpg

なんていうか・・・私は彼について勉強したわけではないので、ただの憶測なのですが、
彼は貧乏であることを憎んだり嫌がったりしていたようには思えないのです。

破滅の中に美を見出していたというか、貧しくて、アブサンとハシシにおぼれる日々の中で、17歳から
彼を苦しめる結核に胸を苦しめられながら、そんな状況下にいることをある意味良しとしていたのでは・・・?と。

a.Amedeo Clemente Modigliani6.jpg

いよいよ生活費が底をつくと、彼は街へ出てカフェで勝手に肖像画を描いては5フランで売りつけたと言います。
当時の売りつけられた人(の子孫も)は、その時は迷惑だと思っても、いまならなんと幸運なことでしょうね。
有名になったからということで価値がどうこう言うのは嫌ですが、たった5フランで描いてもらえるなら、ラッキー
だということも、事実といえば事実ですよね。

165cmと小柄ながら、チャーミングなイタリア男だった彼はモテモテだったようです。
病弱で、ヤク中でアル中の色男とくれば、放っておけない女性も多かったのでしょう(笑)ね。

a.Amedeo Clemente Modigliani2.jpgジャンヌ。

そんな彼の運命の女性は、ロシア人の彫刻家によって紹介されました。
32歳の彼の前に現れた、19歳の画学生ジャンヌ。

彼女はフジタのモデルをつとめていました。
彼らはたちまちのうちに恋に落ちます。そして1年もたたないうちに一緒に暮らし始め、内縁関係に。
ジャンヌは彼のモデルにもなりました。

a.Amedeo Clemente Modigliani1.jpgこれもジャンヌ。

1年後には、娘も生まれます。

生活は変わらずに苦しくて、フリークアウトしたモディリアーニが日銭稼ぎにスケッチブックを持ち、肖像画の
押し売りに出かけると、それをジャンヌが探し回る日々・・・。

でも、二人は不幸ではなかったのです。
お互いの肖像画を描きあったりして、愛し合っていたようです。

それでも病魔は着実に彼をむしばんでいきました。
1920年、娘が生まれて2年後に、彼は結核が引き起こした髄膜炎で、35歳の生涯を閉じました。
エコール・ド・パリの仲間たちが、葬儀を出してくれました。

a.Amedeo Clemente Modigliani4.jpg

のこされたジャンヌは・・・・

2日後に、建物の5階から身を投げて彼のあとを追ったのでした。
お腹には2番目の子がいました。

きっとジャンヌも激しい気性の女性だったのでしょう。
残された娘はイタリアのおばに引き取られ、幼いうちは両親のことをなにもきかされずに育ったそうです。
彼女は長じて芸術の研究科になり、のちに知らされた父のことも研究したそうです。

a.Amedeo Clemente Modigliani3.jpg

モディリアーニとジャンヌは、いまはペール・ラシェーズに一緒に眠っています。
たぶん、ひっそりと。



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cafelamama

ジェラール・フィリップの演じた「モンパルナスの灯」は、
なかなか面白かったですね。
by cafelamama (2012-01-31 07:58) 

旅爺さん

どの芸術家にも夫々強い個性がありますね。
by 旅爺さん (2012-01-31 09:40) 

nana_hyr

モディリアーニの写真初めて拝見しました。
白目むいた肖像画のイメージがとても強いのですが、
表情豊かな作品も多いのですね^^
それにしても生きている間の個展が一度きりだったとは・・・。
亡くなってからうける評価というものは不思議な世界です。
by nana_hyr (2012-01-31 10:11) 

たいちさん

モディリアーニは彼独自の作風を樹立しましたね。短い人生の中に多くの秀作を残し、日本人に好かれる画家の一人ですね。
by たいちさん (2012-01-31 10:26) 

Hirosuke

芸術家の人生は、後に「芸術的」と評される。

一般人の人生は、内容的に似ていても、
「変人」とか「不道徳」とか「非人間的」とか酷評される。

何なんでしょうね、この違い。

by Hirosuke (2012-01-31 11:40) 

orange

モディリアーニと言えば虚ろな目の人物を思い浮かべますが、
このジャンヌの肖像は違いますね。目の力があります。
by orange (2012-01-31 13:54) 

ninja

アンディ・ガルシア主演の映画がDVD化されたのは知っていたのですが、肝心のモディリアーニという人物を知らなかったのでスルーしていました。今度見てみます^^
by ninja (2012-01-31 17:06) 

大林 森

私は幸運なことに好きなことを仕事にさせていただいてますが、いつもシメキリに追われて他人の仕事に嫉妬して、いつも精神的にも金銭的にも余裕がありませんです。

けど、しあわせですー(・´з`・)
by 大林 森 (2012-01-31 17:59) 

ゆう

激しいなぁ。。。
by ゆう (2012-01-31 20:07) 

イカリ-カヲル

一か月遅れのご挨拶

『あけましてました…^0^ノ(笑)』

今年も宜しくですM(_ _)M
by イカリ-カヲル (2012-01-31 22:28) 

gillman

モディアリーニの描く女性はどこか憂いを含んでいるように見えますが、同時にとても魅力的でもありますね。
by gillman (2012-01-31 23:57) 

yuzuhane

若き才能は35歳で散りそのあとを妻が追い、残された娘は長じて芸術の研究家となる・・・このお話を胸に、ペールラシューズのお墓を訪ねてみたいと思いました。ジャンヌの絵がどこか雰囲気が違って見える気がします。
by yuzuhane (2012-02-01 08:41) 

扶侶夢

モディリアーニのオリジナリティはすごいです。
“絵を描くこと”に勇気を与えられます。
by 扶侶夢 (2012-02-01 10:57) 

コダテタカユキ

いつもniceをありがとうございます。
m(_ _)m
モディリアーニの絵は、一目でそれがわかるほどに雰囲気があって、
どことなく切なさを感じつつも、少し色褪せた色調が
何とも言えない懐かしさを感じさせてくれもしますよね…。
オリジナルな画風を確立したことを大いに尊敬します。
by コダテタカユキ (2012-09-26 08:11) 

su-nya

ハンサムですよね☆
by su-nya (2012-09-27 04:18) 

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