東西人魚考。 [なんちゃって博物誌]
水の精霊たちは、西洋で擬人化されてきました。
もちろん、男の精霊もいることはいるのですが、一般的には清らかな乙女の姿とされますw
ウンディーネやローレライは淡水に棲むのですって。
ウイリアム・ウォーターハウスの『ウンディーネ』。
ローレライはラインの難所に棲んで、船乗り(=男たち)を美しい歌声で惑わします。
金の髪の美女。失恋して川に身を投げた女のなれの果てと言われます。
セイレーンも海に棲む一種の水の精です。でも人間と同じ姿をしています。
ウォータハウス『セイレーン』。
それで、今回の主役は海水に棲む水のあやかし、人魚です。
人魚も美しい歌声で船乗りたちを惑わせて、船を沈めてしまうのです。
ウォーターハウス『マーメイド』。
一般的に不吉なものの象徴として、物語や伝説では幸せになれないようです。
アンデルセンの『人魚姫』も、海の泡となって儚く消えてしまいます。
子供心になんて気の毒な話なんだと気が滅入ったことを覚えていますw
船に長い間載っていると陸上とは違う感覚が生まれて、幻覚も見るようになるのでしょうね。
人魚はそんな船乗りたちが作り出した不安と恐怖の擬人化なのです。
美しい乙女というのは、海坊主やクラーケンとはまた違った、そら恐ろしい恐怖です。
美しい歌声で惑わす乙女。美しいから怖いのです。
妖婦なのか、清らかすぎるからなのか。
アンビバレントな男のロマンです(笑)
アイルランドではメロウといいます。
中国では海人魚。しぶいwww
アルノルト・ベックリン『戯れる人魚たち』。
朝鮮半島の伝説は、日本の浦島伝説と似ています(日本に伝承されたとも言いますね;;)。
イ・ジンスという漁師が海で美女に会って竜宮城に連れて行かれます、。高麗人参のような不老長寿の土産をもらって地上へ帰ります。それを娘のランガンが食べてしまいました。
300年たっても、彼女は十代の美しい少女のままでした。
東アジアでは、人魚の肉を食べると不老不死になるという伝説が広く伝承されているようです。
日本は古くから伝説はあったけれど、その姿はまるで人面魚。
こんな感じです。
↓ ↓ ↓
うぬぬ・・・。醜い!!(´д`、)
西洋のように上半身はうら若き美女、のイメージが定着したのは鎌倉時代あたりだそうです。
「八百比丘尼(やおびくに)」伝説という者が、日本各地にはあります。
アイヌにも人魚伝説はあるので、相当昔からあるのでしょうね。
ある日、庄屋の家で、浜で拾ったという人魚の肉が村人にごちそうされます。
でもみんな気味悪がって手を付けません。
ある男が家に持ち帰った人魚の肉を、その娘が食べてしまいます。
そして娘は、何年たっても10代のみずみずしい娘のまま、年を取りません。
何人の夫と結婚しても、夫のほうが先に年老いて死んでしまうのです。
父も死んで身寄りが無くなると、村人に気味悪がられ、尼になって全国をさまようのです。
八百は、「たくさん」という意味ですね。
「八百年生きた」はたくさん生きたということです。
※島酔潜人さんより、沖縄の八重山のお話を聞かせていただきました!
ザン(ジュゴン)のにくを島税として琉球王国に収めていたとのことです。
なるほど、そこから「人魚の肉を食べる」」、そしてきっと、貴重で珍しい肉だから「不老長寿」になると考えられたのでしょうか?
ジュゴンが子供にお乳を与える姿は人間に似ているので、ジュゴンが人魚と思われた時期もありますものね。
(島酔潜人さん、ありがとうございます!)
もっとも妖艶な人魚といえば、鏑木清方の『妖魚』 でしょう。
鏑木清方『妖魚』(一部)。
むっちりとした白肌、肌に張り付く半濡れの黒髪。
手の中で小魚をもてあそび、挑発的に微笑を浮かべます。
この絵を初めて見たとき、びっくりしました。
びっくりした、としか言えません。見てはいけないものを見てしまったような・・・。
(これ、屏風なのです)
女には描けない、「男の理想の女」ですねw
背筋が寒くなるほどの色香が漂っています。
赤く薄い唇は、中性的でもあり、美少年のようにも見えます。
そして何よりも、妖艶さの源はその目です。
三白眼。
これが色香のもとです。(小さくて見えないですよね?すみません;;)
勝手な私の解釈ですけど・・・( ´艸`)
この絵を見て、高校時代に読んだ谷崎潤一郎の『人魚の嘆き』という話を思い出しました。
ひたすら流麗な描写の、さすが耽美派、な文章ですが、
そのなかで人魚の肌のきめ細かさを描写しているんですが、とてもリアルです。
高校生ながらに、「あ、このおじさん(谷崎)、若い女性をよく知ってるのねェ。きもっ」と感じたほどですww
見事なSラインのむっちり美女よりも、本当に少女のようにきゃしゃで、腰など折れそうに細くて、胸も大きくなくて、色白というよりも青白くて、触れるとひんやり冷たい、そんな人魚を私は想像しますが、ウォーターハウスも清方も、文章の谷崎もみんな違うようですw
ちなみに日本には人魚のミイラがいくつかあるそうですが、江戸時代のオカルト趣味で、サルと魚を結合させて輸出していたというので、合成に決まっていますw
高橋留美子さんが、『人魚の森』という漫画を描いていましたね、そういえば。
さて、結論です。
東西どちらも、人魚は男を不幸にするようですw
(幸せになったのはアメリカ映画だけ?)
もちろん、男の精霊もいることはいるのですが、一般的には清らかな乙女の姿とされますw
ウンディーネやローレライは淡水に棲むのですって。
ウイリアム・ウォーターハウスの『ウンディーネ』。
ローレライはラインの難所に棲んで、船乗り(=男たち)を美しい歌声で惑わします。
金の髪の美女。失恋して川に身を投げた女のなれの果てと言われます。
セイレーンも海に棲む一種の水の精です。でも人間と同じ姿をしています。
ウォータハウス『セイレーン』。
それで、今回の主役は海水に棲む水のあやかし、人魚です。
人魚も美しい歌声で船乗りたちを惑わせて、船を沈めてしまうのです。
ウォーターハウス『マーメイド』。
一般的に不吉なものの象徴として、物語や伝説では幸せになれないようです。
アンデルセンの『人魚姫』も、海の泡となって儚く消えてしまいます。
子供心になんて気の毒な話なんだと気が滅入ったことを覚えていますw
船に長い間載っていると陸上とは違う感覚が生まれて、幻覚も見るようになるのでしょうね。
人魚はそんな船乗りたちが作り出した不安と恐怖の擬人化なのです。
美しい乙女というのは、海坊主やクラーケンとはまた違った、そら恐ろしい恐怖です。
美しい歌声で惑わす乙女。美しいから怖いのです。
妖婦なのか、清らかすぎるからなのか。
アンビバレントな男のロマンです(笑)
アイルランドではメロウといいます。
中国では海人魚。しぶいwww
アルノルト・ベックリン『戯れる人魚たち』。
朝鮮半島の伝説は、日本の浦島伝説と似ています(日本に伝承されたとも言いますね;;)。
イ・ジンスという漁師が海で美女に会って竜宮城に連れて行かれます、。高麗人参のような不老長寿の土産をもらって地上へ帰ります。それを娘のランガンが食べてしまいました。
300年たっても、彼女は十代の美しい少女のままでした。
東アジアでは、人魚の肉を食べると不老不死になるという伝説が広く伝承されているようです。
日本は古くから伝説はあったけれど、その姿はまるで人面魚。
こんな感じです。
↓ ↓ ↓
うぬぬ・・・。醜い!!(´д`、)
西洋のように上半身はうら若き美女、のイメージが定着したのは鎌倉時代あたりだそうです。
「八百比丘尼(やおびくに)」伝説という者が、日本各地にはあります。
アイヌにも人魚伝説はあるので、相当昔からあるのでしょうね。
ある日、庄屋の家で、浜で拾ったという人魚の肉が村人にごちそうされます。
でもみんな気味悪がって手を付けません。
ある男が家に持ち帰った人魚の肉を、その娘が食べてしまいます。
そして娘は、何年たっても10代のみずみずしい娘のまま、年を取りません。
何人の夫と結婚しても、夫のほうが先に年老いて死んでしまうのです。
父も死んで身寄りが無くなると、村人に気味悪がられ、尼になって全国をさまようのです。
八百は、「たくさん」という意味ですね。
「八百年生きた」はたくさん生きたということです。
※島酔潜人さんより、沖縄の八重山のお話を聞かせていただきました!
ザン(ジュゴン)のにくを島税として琉球王国に収めていたとのことです。
なるほど、そこから「人魚の肉を食べる」」、そしてきっと、貴重で珍しい肉だから「不老長寿」になると考えられたのでしょうか?
ジュゴンが子供にお乳を与える姿は人間に似ているので、ジュゴンが人魚と思われた時期もありますものね。
(島酔潜人さん、ありがとうございます!)
もっとも妖艶な人魚といえば、鏑木清方の『妖魚』 でしょう。
鏑木清方『妖魚』(一部)。
むっちりとした白肌、肌に張り付く半濡れの黒髪。
手の中で小魚をもてあそび、挑発的に微笑を浮かべます。
この絵を初めて見たとき、びっくりしました。
びっくりした、としか言えません。見てはいけないものを見てしまったような・・・。
(これ、屏風なのです)
女には描けない、「男の理想の女」ですねw
背筋が寒くなるほどの色香が漂っています。
赤く薄い唇は、中性的でもあり、美少年のようにも見えます。
そして何よりも、妖艶さの源はその目です。
三白眼。
これが色香のもとです。(小さくて見えないですよね?すみません;;)
勝手な私の解釈ですけど・・・( ´艸`)
この絵を見て、高校時代に読んだ谷崎潤一郎の『人魚の嘆き』という話を思い出しました。
ひたすら流麗な描写の、さすが耽美派、な文章ですが、
そのなかで人魚の肌のきめ細かさを描写しているんですが、とてもリアルです。
高校生ながらに、「あ、このおじさん(谷崎)、若い女性をよく知ってるのねェ。きもっ」と感じたほどですww
見事なSラインのむっちり美女よりも、本当に少女のようにきゃしゃで、腰など折れそうに細くて、胸も大きくなくて、色白というよりも青白くて、触れるとひんやり冷たい、そんな人魚を私は想像しますが、ウォーターハウスも清方も、文章の谷崎もみんな違うようですw
ちなみに日本には人魚のミイラがいくつかあるそうですが、江戸時代のオカルト趣味で、サルと魚を結合させて輸出していたというので、合成に決まっていますw
高橋留美子さんが、『人魚の森』という漫画を描いていましたね、そういえば。
さて、結論です。
東西どちらも、人魚は男を不幸にするようですw
(幸せになったのはアメリカ映画だけ?)
人魚の森 (少年サンデーコミックススペシャル―高橋留美子人魚シリーズ)
- 作者: 高橋 留美子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/10/18
- メディア: コミック
とっても興味深く読ませてもらいました。
面白いですね~。(`・ω・´)
人魚って西洋での話だと思ってましたよ。
by ごま (2011-05-20 01:18)
こんばんわ~
ご訪問ありがとう。
日本の人魚は ちょっと怖いね~
妖怪扱いだ。
ディズニーの人魚でとどめておこう。
また遊びに来てね~~~
by ふうた〜ん (2011-05-20 01:52)
“人魚は男を不幸にする”という観点は面白いですね。
by 扶侶夢 (2011-05-20 04:36)
へえ~。各地に人魚のお話があるのですね。
>結論
>東西どちらも、人魚は男を不幸にするようですw
気をつけなければ~!!
by Gokigensan-Pictures (2011-05-20 06:21)
人魚って不吉な者だったんですね!?
知りませんでした。
by せいじ (2011-05-20 06:45)
八重山(沖縄)の人形伝説の元になっているのは、”ザン(じゅごん)”です。
昔、肉がおいしかったので、新城島の税として、琉球王朝に献上していたそうです。
by 島酔潜人 (2011-05-20 07:45)
おはようございます
コメントありがとうございます
(^^)/
by はくちゃん (2011-05-20 09:36)
おはようございます^^)
人魚に惑わされて一瞬でいいから現世を忘れたいと思う
哀しいオトコは私だけでしょうか。。。(爆)
by rtfk (2011-05-20 09:48)
う~ん・・・
美女は男を不幸に・・・。
そこに納得!
私的にはやっぱり海人魚~っ(××)b
by 淳司 (2011-05-20 10:11)
先日はコメントありがとうございました。
世界各地に人魚伝説あるなんてしりませんでした。
てか、西洋のものだと思ってました~。
by としごろう (2011-05-20 10:59)
いい話題です♪
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-05-20 11:30)
ご訪問「nice」をありがとうございます。
フルート奏者なのえすが、フルート作品にも「ウンディーネ」を題材にしたものがあります。興味深く読ませていただきました。
by のりえる (2011-05-20 12:42)
こんにちは。
ご訪問、ありがとうございます。
人魚は・・・さて?本当にいたら・・・どうしましょう?(笑)
by hatumi30331 (2011-05-20 14:19)
こんにちは。
中国の人魚の絵もおっとろしいですよね。
西洋は乙女。
東洋は老婆。
って、なんでしょうかね???
by ちゃすけ (2011-05-20 14:19)
”るーみっくわーるど”好きでした^^
谷崎潤一郎の小説読みたくなりました☆
by にこまんま (2011-05-20 15:13)
niceをありがとうございす。日本の魚、歩女(ぽにょ)なんですよね。一言多くてすみません。
by Techan (2011-05-20 16:21)
足が魚の人魚は美しいですが、魚に足が生えている人魚は
気持ち悪いですね。そちらは男性でしたっけ。
by luces (2011-05-20 16:47)
高橋留美子さんの人魚シリーズは好きでした♪
by あやっぴぃ (2011-05-20 17:33)
ウォーターハウスは美しいですよね
by maya (2011-05-20 20:14)
ご訪問ありがとうございます。
とっても興味深く読ませていただきました。
by おれんじわに (2011-05-20 22:25)
ご訪問& nice ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
by あらっ!たまちゃん。 (2011-05-20 22:44)
人魚のこと、昨年から制作のために絵画の題材としてすごく調べていて、
とてもためになる文章でした!
ありがとうございます*
今回、ローレライというタイトルで個展をやるので、
さらに参考にさせてただきます!
他にも興味深そうな記事が多いので、
後々読ませていただきます*
ありがとうございます!
by さな (2012-07-25 02:06)